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印章

インダス文明で使用された。商業活動に使われたとも割れるが、刻まれているインダス文字はまだ解読されていない。

 インダス文明の代表的な遺跡であるモエンジョ=ダーロ遺跡で1200個ほど発見されている。1辺が2~5cmほどの正方形の石に、神話的な場面や、牛・犀などの動物とともに文字が刻まれている。このインダス文字は象形文字の一種であるが、まだ解読されていない。おそらく所有者の所有権を示すものであろうと考えらる。

インダス文明発見のきっかけ

 1850年代のあるとき、当時イギリス領インドであった現在のパキスタン、ハラッパーの町の近くで動物の図柄と文字らしい模様が彫られた郵便切手ほどの四角い石(石鹸石と言われる柔らかい石)が見つかった。ラホールから南に240㎞ほどの場所だ。つづく50年のあいだに同じような印章がさらに3個見つかり、大英博物館に持ち込まれた。誰もそれが何なのか見当がつかなかったが、1906年にインド考古調査局のジョン・マーシャル局長がそれらに目を留めた。彼は最初に印章が発見されたハラッパーの遺跡の発掘を命じた。それが、20世紀最大の考古学の成果と云われるハラッパー遺跡の発掘で、インダス文明の発見の第一歩だった。
 インダス文明は高度な都市文明であることが判ってきたが、この印章に彫られているインダス文字はまだ解読されていない。この印章にはよく穴が開いているので所有者はそれをぶら下げ、恐らくは商品に印を付ける「封印」のために使われていたのだろうと考えられ、イラク、イラン、アフガニスタンおよび中央アジアでも印章が見つかっているので、かなり広い商業圏があり、インダス文明は組織化された複雑な都市のネットワークが存在していたことが想定される。<ニール・マクレガー/東郷えりか訳『100のモノが語る世界の歴史1 』2012 筑摩選書 p.127-133>
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ニール・マクレガー
東郷えりか訳
『100のモノが語る世界の歴史1 』
2012 筑摩選書