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詳説世界史 準拠ノート(最新版)

第8章 近世ヨーロッパ世界の形成

2節 ルネサンス

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Text p.205

ア.ルネサンスの本質

■ポイント ルネサンスの意味と歴史的背景を考え、特にその最初の舞台となったフィレンツェについて知る。

ルネサンス  a 14世紀  に始まりb 15世紀  が最も盛んでc 16世紀  にひろがる。
  • 前提:西ヨーロッパでd 百年戦争・黒死病・教会大分裂・オスマン帝国の脅威など  による危機意識があった。
  • 地域:e イタリア  、に始まり、ついでf ネーデルラント  から西ヨーロッパにひろがる。
  • 背景:g 封建社会がくずれ、商工業が復興し、都市が発展したこと。    
  • 意味:h ギリシャ、ローマの古典文化を手本とし、それを再生すること。    
  • 意義:i 人間性の自由・解放を求め、個性を尊重しようとする文化運動であった。    
  • Text p.206

  • 基本的な精神:人間らしい生き方の探求=j ヒューマニズム(人文主義、人間主義)   
イタリア=ルネサンス  
  •  カトリック教会の権威   ・b ローマ古典古代の伝統   があったこと。
  • 1453年 オスマン帝国のメフメト2世、コンスタンティノープルを征服 → c ビザンツ帝国の滅亡   
      = イスラーム圏を介して、ギリシア・ローマの古典を学んでいた知識人多数が北イタリアに亡命。
  • 条件 d 地中海貿易による都市の発達と豊かな市民生活の形成   があったこと。     
        e メディチ家など  の大商人・f ローマ教皇  などが芸術・学芸の保護者(パトロン)となった。

解説

 15世紀末、フィレンツェ共和国では急進的な宗教改革家サヴォナローラが一時権力をにぎるという混乱があったが、市民の民主的要求も強まり、実力者メディチ家を追放した。そのとき、マキャヴェリも市政に参加している。そのころイタリア戦争が始まり、フランスが侵入、フィレンツェはフランスに協力したが、フランスが敗れ、メディチ家が復活したためマキャヴェリは罷免された。その後もイタリアをめぐるフランス(フランソワ1世)とスペイン(神聖ローマ帝国皇帝カール5世)の対立が続き、マキャヴェリはその中間にあるフィレンツェの外交に苦慮した。

C 新しい政治思想の芽生え

マキャヴェリ

 マキャヴェリ   

  • 都市国家a フィレンツェ  でのb マキャヴェリ  の活動。
    • 1513年頃 c 君主論  を著す。(刊行は32年)
      → イタリアの統一を実現できる君主の出現を期待した。そのためには君主は
        d ライオンのような勇猛さと狐のような狡猾さ   が必要であるとたとえる。
    • 意義:e 政治を宗教や道徳から切り離す近代的な政治観が生まれる。    
       → f マキァヴェリズム  と言われる近代的政治思想の始まりとされる。
フィレンツェ    の繁栄。
  • 14~16世紀、トスカナ地方の文化と経済の中心地として繁栄。
  •  コムーネ(自治都市)  の一つ。b 東方貿易、毛織物生産、金融業   で繁栄。
  • 1434年 金融財閥のc メディチ  家が実権を握る。→  多くの画家、学者の保護者となる。
     ▲d コシモ=ディ=メディチ  はe プラトン=アカデミー  を開設した。

    解説

     1459年、フィレンツェの富豪コシモ=ディ=メディチが別荘に設けた学園。1453年にビザンツ帝国が滅亡、多くのギリシア人哲学者が亡命してきてプラトン哲学を伝えたことに刺激され、プラトンがアテネに設けたアカデメイアをモデルに開設した。ビコ=デ=ミランドラらのイタリア人学者も集まり、ギリシア哲学の研究を行い、るんさんすのヒューマニストの活躍の場となった。
     孫の ロレンツォ=ディ=メディチ は専制君主としてフィレンツェに君臨する。
  • イタリアは、北部の有力な都市共和国、中部のローマ教皇領、南部のナポリ王国に分裂。
    •  ミラノ  :ロンバルディアの中心都市。毛織物生産、武器生産で繁栄。
    •  ローマ教皇  ユリウス2世 によるh サン=ピエトロ大聖堂  の修築が始まる。
アルプス以北    への拡大とその限界。
  • 16世紀  イギリス・フランス・スペインに広がるが、a 国王に保護され、貴族的な性格が強かった。   
    そのため、芸術面での革新にとどまり、政治・教会・社会体制の批判には至らなかった。 
    しかし、16世紀のb 宗教改革  とともに、c ヨーロッパの近代社会  を生み出す前提となった。

F イタリア・ルネサンスの衰退

  • 1494~1544年 a イタリア戦争   イタリアをめぐるドイツ・フランス・スペインの抗争
    → イタリアが戦場となって荒廃し、文化の中心がイタリアからアルプス以北に移る。(後出)
  • 15~16世紀 b 大航海時代  の到来 → 交易の中心、大西洋岸に移る。=商業革命(前節)
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用語リストへ イ.文芸と美術

■ポイント ルネサンスの文学・美術の豊かな内容を知り、理念であるヒューマニズムについて考える。

(1)文芸(文学)と思想

ルネサンス文芸  
  • 古代ローマ以来のラテン文学の伝統に対し、フィレンツェの市民層から新しい文学が生まれた。
    •  ダンテ  :フィレンツェ人、ゲルフとギベリンの争いにまきこまれ、ラヴェンナで晩年を過ごす。
       1304~21年b 『神曲』  をラテン語でなくc 口語(トスカナ語)  で著す。

      解説

       13世紀の末、イタリアではゲルフ(教皇党)とギベリン(皇帝党)が対立、フィレンツェはゲルフに属していた。ダンテもゲルフであったが、ゲルフ内部の党派抗争に巻き込まれてラヴェンナに亡命、そこで14世紀の初めごろ『神曲』を書いた。内容は、古代ローマの詩人ウェルギリウスが、死後の世界の地獄、煉獄、天国を経巡る物語で、中世的な世界観、迷信の域を出ていないが、重要なことはこの作品がトスカナ地方の口語で書かれたことである。
        = カトリックの世界観にたちながら人間精神の解放を主張。→ イタリア国民文学の始まり。
    •  ペトラルカ  :フィレンツェ人、諸国を遍歴し人間の自由を唱った叙情詩人。『抒情詩集』など。
    •  ボッカチオ  :フィレンツェ人。f 『デカメロン』   人間の赤裸々な欲望を描く。

      解説

       ボッカチオはフィレンツェで1348年の黒死病(ペスト)の大流行を体験し、1353年に書いた『デカメロン』の冒頭でその様子を語っている。また彼は中世ヨーロッパの文化史上では忘れられていたホメロスの『イーリアス』のギリシア語原典を発見し、それを翻訳して紹介したことも業績である。
       1353年のイタリアでのg ペストの流行  が描かれている。近代小説の先駆といわれる。
  • イギリス  h チョーサー  :1387~40年 i 『カンタベリ物語』  を著し、中世末期の庶民生活を描く。
ヒューマニスト   の思想
  • 古典研究がカトリック教会批判と結びつき、人間精神の解放をめざす思想が生まれる。
    • ロイヒリン :ドイツ 1506年 自由な古典研究を行い、カトリック神学者から異端として訴えられる。
    •  エラスムス  :ネーデルラント 1509年 b  『愚神礼賛』  を著し、カトリック教会批判を展開。
       → ルターとは対立し、宗教改革には反対。
    •  トマス=モア  :イギリス 1516年 d 『ユートピア』  を発表、イギリス社会を風刺。

      解説

       『ユートピア』は、ドイツでルターの宗教改革が始まった1517年の前年に発表された。アメリゴ=ヴェスプッチの航海に同行した人物が見た新世界にある国と仮定して、絶対王政下のイギリスを批判し、貧富の差のない、戦争のための同盟を結ばない、理想国家を描いた。特に、当時のイギリスで進行していたエンクロージャー(囲い込み)を「羊が人間を食べている」と言って批判した。またモアはヘンリ8世が離婚問題でローマ教皇と対立したことを批判して怒りを買い、処刑された。
       → 国王e ヘンリ8世  の離婚を批判して刑死。
    •  ラブレー  :フランス 1532~64年 カトリック教会や社会の因襲を風刺。
       g 『ガルガンテュワとパンタグリュエルの物語』   を著す。
    •  モンテーニュ  :フランス 1580~88年 i ユグノー戦争  (後出)の時期、『随想録』を著す。
C ルネサンス末期の文学 16~17世紀 各国の国民文化が形成される。
  •  セルバンテス  :16~17世紀 スペイン レパントの海戦に参加して負傷。
      b 『ドン=キホーテ』  による封建制の批判、スペイン風刺文学の傑作とされる。
  •  シェークスピア  :16~17世紀 イギリス絶対主義、d エリザベス1世  の時代の人。
      四大悲劇e 『ハムレット』、 『リア王』、 『マクベス』、 『オセロー』  など。
     → 人間心理の葛藤をテーマにした脚本を残し、後世の文学、演劇に大きな影響を及ぼした。

(2)美術(絵画と建築)

Text p.207

近代絵画   
  • 13~14世紀   フレスコ画 から 油絵技法 へ
    •  ジョット  :ダンテの肖像、「聖フランチェスコの生涯」等
    サンタ=マリア大聖堂

     サンタ=マリア大聖堂   

  • 15世紀  b 遠近法  の確立。
  • マサッチョ :写実主義の基礎を築く。
    • ギベルティ  :彫刻 「天国の門」等
    • ドナテルロ  :彫刻での写実主義の確立。「ダビデ像」等
ルネサンス様式   の建築
  • 円蓋(ドーム)とギリシア風列柱の組み合わせによる建築様式。
    •  ブルネレスキ  :b サンタ=マリア大聖堂  
      (フィレンツェの大聖堂)の大円蓋を完成させる。(右図)
    •  ブラマンテ  :ローマのd サン-ピエトロ寺院  
      を最初に設計。 → 後にe ミケランジェロ  も関わる。
C イタリア美術の最盛期 15~16世紀

解説

 ルネサンス以前の中世ヨーロッパの絵画は、絵画・彫刻・建築のいずれもがキリスト教の教会に付属していた。その表現も、イエスやマリア、その他の聖人を描くのみで、人間は描かれたとしても没個性的で平面的であった。それに対してルネサンス時代から、芸術は教会から独立し、人間そのものの美しさを前面に出して描くようになった。作者も職業として作品を作るようになり、メディチ家などの富豪やローマ教皇、各国の国王や領主を保護者として活動するようになった。技法的には中世までのフレスコ画から油絵に移行し、また遠近法が取り入れられるようになった。
  •  ボッティチェリ  :15世紀 『ヴィーナスの誕生』、『春』。フィレンツェでメディチ家の保護を受けて活動。
  •  ラファエロ  :『聖母子像』、『アテネの学堂』。フィレンツェとローマで活躍。
  •  ミケランジェロ  :フィレンツェで『ダヴィデ像』、ローマでヴァチカン宮殿・システィナ礼拝堂の

    解説

     ミケランジェロはフィレンツェ共和国の共和政の象徴として彫刻作品『ダヴィデ像』(1504)を作った。ローマ恐慌に招かれ、ヴァチカン宮殿のシスティナ礼拝堂の天井に『天地創造』を描いた。いずれも聖書を題材としているが、描かれたのはいきいきとした人間群像であり、教皇を困惑させた。1529年には独裁者メディチ家を追放したフィレンツェに戻り、共和制を守る戦いの先頭に立ったが敗れ、フィレンツェを離れた。晩年はローマで過ごし、システィナ礼拝堂の正面に大作『最後の審判』を描いた。
      『天地創造』、『最後の審判』を制作。建築家としてはd サン=ピエトロ大聖堂  の建築に参加。
  •  レオナルド=ダ=ヴィンチ  :『モナ=リザ』、『最後の晩餐』など。

    Text p.208

    絵画だけでなく自然科学・医学も研究、ルネサンスのf 万能人  の典型。

    解説

    ダ=ヴィンチ

     ダ=ヴィンチはフィレンツェの郊外ヴィンチ村で生まれ、フィレンツェで修業し、ミラノ、ローマでも活躍した。ミラノの教会の壁画として制作した『最後の晩餐』は油絵技法と遠近法を駆使した代表作。『モナ=リザ』は肖像画の傑作とされる。彼は画家・彫刻家・建築家だったばかりでなく、ミラノでは軍事技術者として仕え、潜水艦や飛行機、ヘリコプター、戦車などを構想した。また人体の解剖も行い、すぐれた音楽家でもあって「万能人」の典型であった。科学技術や絵画に関する膨大な手稿を残している。晩年はフランスのフランソワ1世に招かれて、アンボワーズに住み、1519年にそこで死去する。そのため『モナ=リザ』はパリのルーヴル美術館に所蔵さている。


    ▲晩年はフランスのg フランソワ1世  の保護を受ける。
春 モナ=リザ
      a ボッティチェリ  :『春』      e ダ=ヴィンチ  :『モナ=リザ』


D アルプス以北のルネサンス美術
  • ネーデルラント(オランダ)
    •  ファン=アイク兄弟  :14~15世紀 油絵技法を完成し、b フランドル派   を開く。
    •  ブリューゲル  :16世紀 農民を題材にした絵画。「農民の踊り」など。
  • ドイツ 15~16世紀
    •  デューラー  :銅版画を作成。「自画像」  
    •  ホルバイン  :「エラスムス像」、「トマス=モア像」

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用語リストへ ウ.科学と技術 
■ポイント ルネサンスが大航海・軍事革命・宗教革命などの変革と連動していることを理解する。
1.地動説  
  •  コペルニクス  (ポーランド)1530年ごろ 天体観測に基づき地動説を主張。
  • ▲b ジョルダーノ=ブルーノ  (イタリア) 地動説・汎神論を説く。1600年焚刑。
     カトリックの世界観=聖書の天地創造説にもとづく天動説に対する挑戦となる。 17世紀の「科学革命」へ。

Text p.209

2.三大発明  
  •  羅針盤   中国の宋 → イスラーム商人 → 14世紀イタリアで改良される。
     → b 遠洋航海  を可能にする → 15世紀末 大航海時代をもたらす。
  •  火薬   中国の元で実用化 → イスラーム商人 → ヨーロッパに伝来 → d 火砲(鉄砲) の発明
     → 騎士の没落 = 軍事革命(後出)
  • 活版印刷
  •  活版印刷術   活字印刷は宋代に始まる。
     1440年 ドイツのf グーテンベルク  が実用化。
     活字合金を鋳型で鋳造し、加圧式の印刷機を改良。(右図)
     g 製紙法  の伝播と結びつき、書物の迅速・安価・大量な出版を可能にした。
    → h ルター  、ドイツ語聖書の大量印刷。
    → i 宗教改革  の広がり。

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