ガルガンチュワとパンタグリュエルの物語
16世紀、フランスのラブレーの、伝説上の巨人親子を主人公として仮託した社会批判の書。
16世紀フランスのラブレーが書いた書物で、1532年から1564年にかけて刊行された。「第一の書」『ガルガンチュワ物語』と「第2の書」~「第5の書」の『パンタグリュエル物語』の全5編からなる物語。ガルガンチュワとその子パンタグリュエルは、伝説上の巨人であるが、ラブレーはこの二人を主人公としながら、自由奔放に逸脱して物語を展開した。抱腹絶倒、場面によってはばかばかしい話であるが、内容は当時のカトリック教会や修道院に対する激しい風刺となっていたので、カトリック神学の殿堂であるパリ大学神学部からにらまれ、禁書に指定されることになった。しかしその文章にはラブレーのギリシアやローマの古典に対する豊富な知識によるさまざまな装飾が施されており、文学としても価値が高い。また単なる教会批判ではなく、一方でカルヴァン派などの新教徒の狂信ぶりや、高等法院(裁判所)の形式主義なども笑い飛ばしながら批判している。そのためカルヴァンもラブレーとその著書を非難罵倒している。この書の内容は大部であり、豊富である。日本語への翻訳は戦前の渡辺一夫氏のものが現在、岩波文庫5冊本で読むことができる。その洒脱な翻訳、詳細にわたる註など、訳業は敬服に値するが、正直言うと読み通すのはなかなか骨が折れた。