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レヴィ=ストロース

現代フランスの文化人類学者。構造主義を提唱し、現代思想の諸方面に大きな影響を与えた。

 レヴィ=ストロース Claude Lévi-Strauss 1908-2009 は、フランス人で始めパリ大学で哲学と法学を学び、リセ(日本の高校にあたる)の哲学教師となる。アグレガシオン(教授資格試験)の前の教育実習では、哲学者のメルロ=ポンティやボーヴォワールと一緒だった。1935年、ブラジルのサンパウロ大学の社会学講師に赴任、パンタナール地方の現地種族ボロロ族などの調査を行ううちに、民族学、文化人類学に転じた。以後、ブラジル奥地のフィールドワークを通じて、多様な文化のあり方に着目し、1955年『悲しき熱帯』を発表した。以後、『構造人類学』、『親族の基本構造』、『野生の思考』などを発表、いわゆる構造人類学の旗手となった。

構造主義の旗手となる

 レヴィ=ストロースの分析は親族構造、言語学、神話など多岐にわたるが、その理論は「構造主義」の先駆とされ、戦後の新たな思想潮流を造りだした。レヴィ=ストロースが見出したものは、西洋近代文明に対して、いわゆる「未開」社会にも豊かな社会機構や精神世界が存在し、それらは人間社会の「構造」としてとらえることが出来る、ということであった。この考えは、サルトルの実存主義を、西洋近代の枠の中で個別の自己に埋没した思想であると批判し、サルトルと激しい論争を展開した。「構造主義」は、哲学のフーコー、マルクス主義のアルチュセール、文学のロラン=バルト、精神分析学のラカンなど、1960年代から広い分野に影響を与え、現代思想の大きな潮流となった。 → 現代の思想
 1980年代から構造主義に対する批判がデリダやガタリといった人々によって始められ、「ポスト構造主義」、「ポストモダン」、「脱構築」などといわれる状況となっている。<レヴィ=ストロースの思想を知るには『悲しき熱帯』(川田順造訳)中央公論社刊がよい。構造主義にについての簡単な解説は橋爪大三郎『はじめての構造主義』講談社現代新書、小田亮『レヴィ=ストロース入門』ちくま新書 などがある。>
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書籍案内

レヴィ=ストロース
川田順造訳
『悲しき熱帯』(上下)
中公庫シックス

彼が生活し、観察したブラジルの現地民の社会や、インドのカースト制などの分析が展開され、スリリングでおもしろいので、ぜひ手にとって読んでほしい。