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第4章 イスラーム世界の形成と発展

 ◀ 1節 イスラーム世界の形成

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ア.イスラーム教の誕生 ノート(ア)

解説:ムハンマドの登場

 彼の登場以前の部族神を崇拝する多神教の時代をイスラーム教ではジャーヒリーヤといっている。ジャーヒリーヤとは「無明(むみょう)」または「無道」とも訳され、イスラーム以前の砂漠の遊牧民ベドウィン(アラブ人)が、部族的社会の中で、祖先崇拝や偶像崇拝を行い、また迷信を信じ、現世の栄華を求め、略奪や抗争をこととしていた状態を言う。このような神を恐れず、真理に無知であった人々に対する警告者として登場したのがムハンマドであった。

解説:イスラーム暦

 イスラーム暦はヒジュラ暦ともいわれ、西暦622年を元年とし、太陰暦(月の満ち欠けによる暦)を厳格に守って一年を354日とする。第2代カリフのウマルの時に定められた。現在でもイスラーム世界ではその暦が使われているが、不便な点が多く、太陽暦と併用されている。ただし、イスラーム暦と西暦は1年の日数が違うから、簡単には換算できない。なお、トルコではケマルパシャのトルコ革命の世俗化によって西暦が使用されている。

解説:礼拝

礼拝の作法  礼拝は1日五回、メッカの方を向いておこなわれる。金曜日にはモスクにおいて集団礼拝がおこなわれる。左の図はその作法を示したもので、1~17の動作を1サイクルとして行う。<中村廣治郎『イスラム教入門』岩波新書 p.115 より>

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イ.イスラーム世界の成立 ノート(イ)

解説:アリーとシーア派

 アリーはムハンマドと同じくメッカのハーシム家の出で、ムハンマドの娘ファーティマの夫となった。大変勇敢な指導者として「アッラーの獅子(アサドッラーク)」と言われた。656年、ウマイヤ家出身のカリフ・ウスマーンが暗殺された後、ムハンマドに最も近い人物と言うことでカリフに選出されたが、ウマイヤ家の統領であるシリア総督ムアーウィヤはアリーがウスマーン殺害の背後にあるとみなして対立し、660年ダマスクスでカリフを称して離反した。両者の争いは決着がつかず、アリーはムアーウィヤの提案を入れて戦闘を中止した。それに反発した過激派(ハワーリジュ派)の刺客が両者を暗殺する計画をたて、661年、クーファでアリーの暗殺に成功した。ただ一人カリフとして残ったダマスクスのムアーウィヤがイスラーム世界の統治者となったが、それを認めずにアリーの子孫のみをイスラームの指導者(イマーム)であるとするシーア派が出現することとなる。

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ウ.イスラーム帝国の形成 ノート(ウ)

解説:イスラームの税制

 ウマイヤ朝までとアッバース朝以降のイスラーム帝国の税制の違いを概略を示す。×は課税されないことを示し、○は課税されることを示す。非アラブ人のマワーリーとはイスラーム改宗者、ズィンミーとは非改宗者で被保護者の意味。
王     朝 ウマイヤ朝まで アッバース朝から
税     制 ハラージュ ジズヤ ハラージュ ジズヤ
ア ラ ブ 人 × × ×
非アラブ人 マワーリー ×
ズィンミー

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エ.イスラーム帝国の分裂 ノート(エ)

解説:ハールーン=アッラシード

 ハールーン=アッラシードがカリフとなった時代はヨーロッパではフランク王国のカール大帝と同時期であり、フランク側の記録では贈り物の交換をしている。フランクとアッバース朝は、ビザンツ帝国と後ウマイヤ朝という共通の敵を持っていたので、友好関係を持ったことは考えられる。ただし、両者の力関係は、圧倒的にアッバース朝ハールーン=アッラシードが上であった。彼はまた文芸や芸術を好み、多くの芸術家を保護し、バグダードの繁栄をもたらした。彼がバグダードに建設した知恵の館は、アレクサンドリアのムセイオンに伝えられていたギリシア語文献を、アラビア語に翻訳する学術センターとして機能した。しかし、その死後、広大なアッバース朝イスラーム帝国の各地に、地方政権が自立し、分裂の時代がやってくる。

解説:ブワイフ朝

 ブワイフ朝は、イランに成立したイスラーム地方政権の一つでシーア派の穏健派十二イマーム派を信奉していた。アッバース朝の弱体化につけ込んでバグダードに入城し、軍事政権を建てたが、アッバース朝を滅ぼしたわけではなく、そのカリフを保護する代わりに、イスラーム法の執行権、つまり政治権力をあたえられ大アミールという地位に就いた。日本で言えば、天皇と鎌倉幕府の関係に似ている。このブワイフ朝では、イクター制度が始まることが重要(後出)。

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イスラーム世界の形成 解説 終わり
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