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世界史序説

イスラーム歴史学の大家イブン=ハルドゥーンが著した歴史書。

 イブン=ハルドゥーンが1377年に著した歴史書で、正確には『省察すべき実例の書、アラブ人、ペルシア人、ベルベル人および彼らと同時代の偉大な支配者たちの初期と後期の歴史に関する集成』という題名も長いが、本文も長大な歴史書のまさに序論にあたる部分をさしている。岩波文庫に翻訳(森本公誠訳、全4冊)があるが、そこでは『歴史序説』という題名になっている。
イブン=ハルドゥーンの歴史論 山川出版社の教科書『詳説世界史』p.114に「都市と遊牧民の交渉を中心に、王朝興亡の歴史に法則性があることを論じた」とあるが、それはどういうことかというと、イブン=ハルドゥーンが言うには、イスラーム世界には、文明の進んだ都市(ハダル)と、そうでない砂漠(バドウ)とがあり、砂漠に暮らす人々が強い連帯感(アサビーヤ)を持って勃興し、都市を征服し強力な国家を建設するが、やがて都市生活の中で連帯感を失い、新たな集団に征服されるということを繰り返しているというのである。またその交替は3代120年で起こると言っている。人々を連帯させる砂漠の生活と、人々の連帯を希薄にする都市文明という対比は、現代の世界を考える際にも興味深い見解であると思う。