印刷 | 通常画面に戻る |

封建的主従関係

授封の図
臣従礼と授封の図

中世ヨーロッパの封建社会の軸である、領主間の土地を仲立ちとした保護と服従の関係。

 中世西ヨーロッパの封建社会において、領主層のなかに成立していた、主君と家臣の関係。家臣は主君に対して隷従し、従軍などの軍役を奉仕する。主君は家臣に封土を与え、保護する義務を負う。このような、土地を仲立ちとした主従関係を封建的主従関係という。この関係は双務的な関係であり、また重層的である。国王は最大の封建領主として有力な家臣を諸侯として広大な土地を与え、諸侯もそれぞれ家臣(騎士)を持つ。家臣もさらに下級の家臣と主従関係を結んでいる。主君と家臣は主従関係を結ぶ際、叙任式(オマージュ)という儀式を行った。家臣はひざまずいて忠誠を誓い、主君は家臣に剣をあたる、という儀式で主従関係を象徴させていた。このような封建的主従関係(レーエン制ともいう)は、ローマ時代の恩貸地制度と、ゲルマン社会の従士制が結びついて形成されたと考えられ、国家による保護と言うことがなくなった中世社会に特有の社会関係である。日本でも鎌倉幕府の御家人制度以降の武家社会に見られた。
※右図の説明 14世紀のドイツ法書ザクセン鏡の絵入り本(ハイデルベルク図書館蔵)より。上図は主君(右)が臣下(左)の手を自分の両手でつつみ、臣下の誠実を受けている。臣下の三本の手は一つは自分をさし、他の二本は与えられた封土(穀草で象徴される)をさしている。下図は、聖職者(司教、修道院長)に対する笏による授封(左)と諸侯に対する旌旗による授封(右)の違いを示している。<堀米庸三編『中世ヨーロッパ』世界の歴史3(旧版)中央公論社 p.98>

双務的契約関係

 双務的とは、主君と家臣の双方がいずれも義務を負うことであり、その関係がそれぞれの利害にあったとき、契約として結ばれることを言う。つまり、家臣は一方的に主君に対して従軍などの義務を負うのではなく、主君も家臣を保護するという義務を負っている。家臣は主君が十分自己を保護することが出来ないと考えれば、契約を解除することも出来る。契約がある以上、双方ともその義務を守る誠意を持たなければならない。またその関係は一対一ではなく、一人の家臣が複数の主君と契約することもあり得た。日本の「家臣は二君にまみえず」というのとはちがい、ドライな契約関係であった。
印 刷
印刷画面へ