普遍論争
中世ヨーロッパのスコラ哲学で論じられた論争。
スコラ学で中心的な課題となったのが11~12世紀に起こった「普遍論争」だった。「普遍」とは「個」に対する概念で、たとえば「アリストテレスは人間である」といった場合、アリストテレスは個であり、人間は普遍である。そのような、「人間」とか、「動物」といったものは実際に存在するのかどうか、という論争であった。
まずスコラ学の父といわれるイギリスのアンセルムスは、「普遍は実在性をもち、個に先だって存在する」と主張し、実在論 (実念論ともいう。リアリズム)を説いた。それに対しては「普遍はたんなる名辞に過ぎず、ただ個のみが実存する(普遍は個の後ろにある)」という主張は唯名論 (ノミナリズム)と呼ばれた。アベラール(アベラルドゥス)は両者を調停して、「普遍は実在性をもつが、ただ個の中に(個に即して)のみある」と主張し、唯名論の立場を強めた。
論争は「実在論」が優勢となって、13世紀のトマス=アクィナスもその立場にたってスコラ学を体系づけ、神を普遍的な存在として実存するという思想がローマ=カトリック教会においても正統派を形成した。しかし、14世紀にウィリアム=オッカムなどの「唯名論」が復活し、観念的な思考を廃して観察や実験によって真理を探究する近代思想の萌芽につながっていく。
まずスコラ学の父といわれるイギリスのアンセルムスは、「普遍は実在性をもち、個に先だって存在する」と主張し、