印刷 | 通常画面に戻る |

キープ

インカ帝国で行われていた紐の結び目で数値を表す記録法。インカ社会では文字の役割を果たした。


泉靖一『インカ帝国』p.226 より
 インカ文明には文字が無く、数字を記録するキープ(結縄)が使われた。これはインカ帝国で発明されたものと思われる。キープの基本的構造は長さ約1mのやや太い主紐に、百本またはそれ以下の細い紐が直角にとりつけられ、それらの細い紐には彩色が施されてたり、途中からさらにひもがつけられている。この細い紐に結び目をつくることによって数を記録し、色分けした紐の種類で数の性質を分類するしくみであった。数は結び方によって示し、なにも結ばない0から、結び目の数で数値をあらわした。桁数は結び目から主紐までの距離によってさだめられている。インカ帝国ではキープの作製と解読の専門家、キープ・カマヨを養成し、都のクスコでは貴族の子弟の学校でキープの解読法を教えていた。<泉靖一『インカ帝国』1959 岩波新書 p.226>

飛脚(チャスキ)による伝達

 インカ帝国では、広大な帝国領に、都クスコを中心として道路網が建設された。この王道はできるだけ直線で作られ、つねに清掃されていた。この道を使って走り、王の命令を伝えた飛脚はチャスキといわれ、彼らは王の命令が記録されたキープを携え、ものすごい早さで王道を駆け抜けたという。その秘密は、疲労回復材として「コカの木」の葉を噛むことだった。コカには精神を高揚させ、疲労を忘れさせる興奮剤の効果があったのだ。コカはやがてヨーロッパにもたらされ、麻薬コカインに精製され、(販売当初の)コカコーラに含まれ、世界的な大ヒット飲料となっている。

印 刷
印刷画面へ
書籍案内

泉靖一
『インカ帝国』
1959 岩波新書