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近代世界システム

16世紀の主権国家形成の世界を捉えたウォーラーステインの提唱する学説。

「近代世界システム」とは1970年代にアメリカの社会学者・経済史家ウォーラーステインが『近代世界システム-農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立-』などで展開した概念で、近代以降の世界史に新たな展望を与えた論説となったものである。要点は、16世紀の主権国家形成期の世界において、先進的な中核地域=イギリスオランダ・北フランスと辺境=東ヨーロッパ・新大陸、その中間的な半辺境=イタリア・スペイン・南フランスの地中海地域からなる「ヨーロッパ世界経済システム」が形成されたという見方である。

ウォーラーステインの近代世界システム論

:要約
「近代世界システムの二大構成要素・・・・すなわち、一方では世界的な規模での分業体制を基礎として、「資本主義的世界経済」が成立した。この「世界経済」を構成する各地域-それぞれ、中核、半辺境、辺境とよぶ-はそれぞれに固有の経済的役割をもち、それぞれに異なった階級構造を発展させた。その結果、それぞれの地域には独自の労働管理の方式が成立した。これに対して政治は、基本的には国家の枠組のなかで動いていたが、各国が「世界経済」のなかで担う役割が違っていたから、国家の構造にも差が生じた。なかでも、中核地域の国家は中央集権化がもっとも進行したのである。」<上掲書Ⅰp.231>ということであろう。ここでいう中核とは「つまりキリスト教徒支配下の地中海域を含む西ヨーロッパ」であり、人口密度が高く、農業は集約的で、自営農民(ヨーマンなど)が自立しており、都市が発達し、工業が生まれ、商人が経済的にも政治的にも大勢力となった。そこでの労働管理方式は自由な契約労働が行われた。辺境とは「東ヨーロッパとスペイン領新世界」であり、そこでの労働管理の方式は「奴隷と換金作物栽培のための強制労働」が用いられた。東ヨーロッパにおける再版農奴制と、スペイン領新世界におけるエンコミエンダ制である。半辺境とは「もとは中核に位置していたのに、いまでは辺境的な構造を持つようになった地域」でまさに両者の中間形態にあたる分益小作制が労働管理の方式としてとられた。それが南フランス、イタリアであり、またスペイン・ポルトガルもそれにあたる。このような「近代世界システム」が形成されたのが16世紀であったという。<同上 p.124~166>
なお16世紀段階ではインドのムガル帝国、中国の明は、この世界システムにまだ組み込まれていない。
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ノートの参照
8章1節 ウ.商業革命と価格革命
書籍案内

I.ウォーラーステイン、川北稔訳
『近代世界システムⅠ』1974 岩波書店