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ヘンリ=コート/コート

1780年代にイギリスでパドル法と言われるコークスを利用した製鉄法を完成させ、産業革命に大きな役割を担った。

 ヘンリ=コートは18世紀後半のイギリスの産業革命期に活躍した製鉄業者。ダービー父子によって18世紀初頭にコークス製鉄法が発明されたが、銑鉄から良質の棒鉄(バー・アイアン)を製造するためにはどうしても木炭を使わなければならず、それが障害となって鍛鉄の生産量は増加しなかった。18世紀においてもイギリスは大量の棒鉄をスウェーデンやロシアから輸入していた。そこで石炭を燃料として良質の棒鉄を作る発明が緊急の課題となっていた。それを解決したのがヘンリー=コートである。
 コートの発明は、石炭で加熱して反射炉に銑鉄を入れて糊状に融解し、反射炉の中で攪拌して錬鉄の塊をつくる1785年の特許と、それをハンマーで打って鉱滓を取り除いたのち、さらに熱してハンマーで打つかわりにローラーにかける1783年の特許から成っている。この方法は一般にパドル法と言われ1790年代から急速に採用されていった。その結果、イギリス製鉄業の中心地は従来のダービー一族の拠点シュロップシャーから、石炭をえやすいという立地条件によって南ウェールズやスタッフォードシャー、ダービーシャ、ヨークシャ、スコットランドなどに移っていった。
反射炉を利用したパドル炉 反射炉の特徴は、火床と炉床が分離しており、燃料と接触することなく銑鉄を溶解・精錬することができ、石炭を用いても硫黄が鉄に混入する畏れがなくなったことにある。パドル炉で抽出された鉄塊を鍛造・成形する工程でも水力を利用していた「はねハンマー」から、蒸気機関を動力とした「圧延機」が用いられるようになった。<長谷川貴彦『産業革命』2012 世界史リブレット 山川出版社 p.53>
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長谷川貴彦
『産業革命』
世界史リブレット 116
2012 山川出版社