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アンクル=トムの小屋/ストゥ夫人

1851~52年、ストゥ夫人によって書かれた小説で、黒人奴隷のおかれた状況を愛情を持って描き、奴隷解放運動の高揚をもたらした。

 アメリカ合衆国にける黒人奴隷制は、建国の際にも問題となったが、解消されないまま維持されていた。その非人道性は北部の白人のあいだにも次第に深刻に捉えられるようになった。そのような中、1851~52年にストゥ夫人が雑誌『ナショナル・イーラ』(国民時代)に発表した『アンクル=トムの小屋』Uncle Tom's Cabin は、逃亡奴隷法などの黒人奴隷の悲惨な状況を告発し、52年5月に単行本として出版されるとたちまちベストセラーとなって最初の一年で30万部を売り尽くした。この書が書かれたことはアメリカを南北戦争という危機に導いた出来事の一つだった。

ストゥ夫人

 ストゥ夫人(ストー夫人とも表記) Hariett Elizabeth Beecher Stowe 1811-96 は北部コネティカット州の牧師の家に生まれ、シンシナティの神学校教授のストゥと結婚した。ケンタッキーなどを旅行した際に黒人奴隷の悲惨な実態を知って衝撃を受け、1850年に制定された奴隷の自由州への逃亡を取り締まる逃亡奴隷法に対する反対の意図を込めて、51年から雑誌に『アンクル=トムの小屋』の連載を開始した。

奴隷解放運動への影響

 この書は、政界から離れていたリンカンにも刺激を与えた。リンカンはまもなく1854年、民主党の奴隷制拡大論者が提案したカンザス・ネブラスカ法が成立し、ミズーリ協定が破棄されたことに強く反発し、共和党の結成に加わり、やがて頭角を現して1860年に大統領に当選、それを機にアメリカ合衆国は南北戦争に突入することになる。その過程で63年1月、奴隷解放宣言が出され、すトゥ夫人の訴えは一応の結実となる。

Episode 大きな戦争をひきおこした小さな夫人

(引用)『アンクル=トムの小屋』は、奴隷制度にまっこうから反対し、したがって、また、この制度を支持した南部諸州に反対して、合衆国で出版された印刷物のなかで、最も影響力をある作品であった。宣伝のあらゆる企画のなかで、これほど効果的であった文書はなかった。それは、奴隷制問題についての妥協を、時代おくれにした四つの大きな要因のひとつだった。
 十年後に、ストー夫人は白堊館(ホワイトハウス)に出かけてゆき、リンカン大統領から、次のような言葉で迎えられることになる。「では、あなたが、この大きな戦争をひき起こした本をお書きになった小さなご婦人なんですね――」と。当時、彼女と彼は、・・・おそらく世界中でもっとも名前の知れわたった二人のアメリカ人だった。彼女は、リンカンにとって、力強い忠実な友人となり、また彼の政策の支持者になった。<ホイーア/小原敬士・本田創造訳『リンカン―その生涯と思想』1957 岩波新書 p.99>
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ノートの参照
第12章3節 イ.南北戦争