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主体思想

チュチェ思想という、北朝鮮の金日成が提唱した独自の社会主義理念。

 朝鮮民主主義人民共和国の指導者金日成(キムイルソン)が定式化した、朝鮮労働党の独自の指導理念。朝鮮労働党はソ連共産党の指導で結党され、当初はスターリンの影響下にあったが、1953年にスターリンが死去し、56年にソ連でスターリン批判が始まると、スターリン思想を継承しながら独自の社会主義理論を造る必要が生じた。1955年の演説で金日成が始めて主体思想に触れたとされているが、実際に形成されるのは60年代であり、1970年の労働党大会でその確立が宣言された。
 金日成の主体思想は、「思想における主体、政治における自立、経済における自立、防衛における自衛」という4つの基本をもち、北朝鮮が国家としてソ連や中国からも独立していることをアピールするものであった。金日成の後継者である金正日体制ではさらに先鋭化して、「先軍政治」(軍事をすべてに優先させる政治)に変質し、依然としてアメリカ帝国主義を主要な敵と位置づけ、国際世論に背を向けた核開発などに走っている。
 金正日は1997年に朝鮮労働党総書記に就任、98年には国防委員長という肩書きについたが、事実上の独裁者として父の金日成の権威を最大限に利用した。2011年に死去すると、次男の金正恩が後継者となり、「金王朝」を継承した。しばしばミサイル発射実験や韓国基地の砲撃などを行い、緊張を演出しながら独裁権力の維持を図っているが、主体思想という理念は最近では強調されることはなくなっているようだ。
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