道具の使用
人類が直立二足歩行することと並行して獲得した能力。この技術によって文明の形成へと進むこととなった。
第一の技術革命
人類が直立二足歩行することによって自由になった手を使い(あるいは道具や武器を前足で持つようになって二足歩行が出来るようになり)、道具を手に入れ、自然そのままの生活から、自然に働きかけて生活をする存在となった。道具には自然の石や木などが使われたであろうが、その痕跡は人類化石と共に出土する食糧になったと思われる動物の骨などから類推するに過ぎない。人類が造った道具として最初に登場するのは打製石器であり、動物を解体したり、木を削ったり、また石器を使って石器を造ったりする「道具を造る道具」として用いられた。それが現代の自動車や飛行機、コンピューターや携帯電話という「道具」の始まりであり、石器製造は人類の「第一の技術革命」であった。250万年前のアウストラロピテクスの遺跡から出土したレイヨウのスネの骨には硬いもので打ち付けた傷が何カ所も残っており、石器で骨を割って中の骨髄を食べていたことをうかがわせる。 → 第二の技術革命 火の使用
Episode チンパンジーも道具を使うが……
野生のチンパンジーも石を使って硬い木の実を割ることが知られている。果たしてチンパンジーは道具を造ることが出来るだろうか。アメリカの研究者が記号を使ってコミュニケーションが出来ることで有名な”秀才”チンパンジーのカンジ君の協力で実験を行った。ひもでくくった箱の中に果物を入れ、石を砕いて石器を造ればひもを着ることが出来ることを身振りで教えた。カンジ君は石を投げつけて砕くなどの方法で石片を造り出す方法を編み出し、果物を取り出せるようになったという。しかし人間が造るような鋭い切れ味の石器はついに造ることが出来なかった。実用に耐える石器を造るにはどのような角度で石を割ったらいいか、という想像力が必要だが、カンジ君にはその想像力はなかったのだ。<三井誠『人類進化の700万年』2005 講談社現代新書 p.77>