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打製石器

人類が石を材料に「加工、製造」した「道具」。打製石器は旧石器時代の指標となる。おおよそ礫石器→握斧→剥片石器→石刃へと段階的に進歩し、細石器を経て磨製石器(新石器時代)に移行する。

人類最初の道具

 石器の発明は人類にとって、「第一の技術革命」にあたるもので、ヒトの特徴の一つ「道具を造る」ことにあたる。猿人から原人、さらに旧人、新人の1万年ほど前までに使用された石器は「打製石器」であった。打製石器は人類の文化のほとんどを占める長期にわたって使用され、その時代を「旧石器時代」というが、その長い期間でも変化、発展があった。
 はじめの猿人段階では、ほとんど自然石と変わらない、一個の石材の一部を打ち掻いて造る礫石器であったが、ホモ=エレクトゥス(原人)段階になると、石材を全面的に加工してかたちを作り、握斧(ハンドアックス)にするようになり、さらにネアンデルタール人は、石材を割ってできる剥片を、さらに細かくうち砕きながら、ナイフややじり型の石器を創り出す剥片石器という高度な石器製造技術をもつようになった。また一部では細かな細工を施し、木器と組み合わせて用いる細石器も現れた。これらの打製石器には、世界各地に共通する技法と地域の独自の技法とがあり、人類が互いに教え合いながら、また環境にそれぞれ適応していった歴史が刻まれている。

礫石器

人類が最初に作った最も原始的な道具。オルドワン石器と言われる初期段階の石器の一つ。

最も原始的な石器

礫石器

礫石器の造り方と使用法

 れきせっき。旧石器時代の最も粗末な、自然石の一部をうち割って作った石器。人類が最初に作った石器である。このような最も簡単な打製石器をヨーロッパではオルドワン石器といい、旧石器文化のこの段階をオルドワン文化とも言う。これはアフリカの大地溝帯で発見された化石人類であるホモ=ハビリスが作りだしたもので、人類は”道具”を獲得したと言える。最も古いものはエチオピアで発見された約250万年前の石器とされている。ホモ=ハビリスはかつてはアウストラロピテクス(猿人)に近いとされていたが、現在ではホモ属に属し、ホモ=エレクトゥス(原人)により近いとする説が有力になっている。

NewS 最古の石器は330万年前?

 2015年5月21日付の朝日新聞によると、330万年前の最古の石器がアフリカで発見された。イギリスの科学誌ネイチャーに発表されたもので、ケニアのトゥルカナ湖に近い遺跡の330万年前の地層から、材料をのせる石や、ハンマーのように使う石、鋭利な刃物を作るための石などが見つかったという。これまで最も古い石器はエチオピアで見つかった260万年前のものより約70万年さかのぼるもので、現生人類であるホモ属が出現する以前のものとされる。研究チームによると最古の石器を使う動作はチンパンジーが木の実を割るときの動きに似ていた可能性が強いという。<朝日新聞 2015年5月21日>
 しかし、この最初の石器はまだ一般には承認されておらず、現在も石器の出現は260(あるいは250)万年前の東アフリカにおけるオルドワン石器とされている。

ハンドアックス(握斧)

より発達した打製石器であるアシュール石器の一種で、握斧のこと。旧石器時代を代表する石器。

石核を使用

握斧

握斧の造り方と使い方

 握斧。打製石器で、石材のまわりを全面的に打ち掻いて、手で握ることの出来る形に整形する。原石の核(本体)を使うので石核石器の一種である。旧石器時代の最も一般的な石器。150万年前から現れ、30万年前頃まで続いたもので、ヨーロッパではアシュール石器(フランスのサン=アシュール遺跡が基準)と言い、この段階の旧石器文化をアシューリアン文化と言っている。打製石器でも高度な技術を持ったこの文化の担い手は、化石人類の段階ではホモ=エレクトゥス(原人)の時期に当たる。
ハンドアックスの意味 約175万年前のエチオピアで現れた新しいタイプの石器がアシュール石器で、その代表例がハンドアックスである。ハンドアックスは原石の全面を涙のしずくのような形に加工し、手で握って、切る、削る、掘るなど何にでも使えた。この石器を使ようになったホモ=エレクトゥスは、動物の皮を切りさき、肉を取り出し、骨を割って骨髄を取り出して食べた。こうして人類は常習的に肉食をすることができるようになった。脳容積が大きくなったのも、肉食によって脳の消費するエネルギーを補うことができるようになったためであった。また肉食と共に火の使用も始まった。

剥片石器

石核ではなく、剥片(削り取った部分)を利用する高度な石器製造技術。

剝片を利用

剝片石器

剥片石器の造り方と使い方

 はくへんせっき。旧石器時代の礫石器やハンドアックスは、石核を残す石核石器であるが、原石から剥がされた石片を利用してつくるのが剥片石器。より鋭利な石刃を造ることが出来、打製石器技術が高度に発達したことを示す。ヨーロッパの旧石器文化ではムステリアン文化といわれ、剥片を打ち出す技術はルヴァロワ技法という。化石人類では、ネアンデルタール人の時期(かつては旧人の段階と言われた)に当たる。

石刃技法

ホモ=サピエンス(クロマニヨン人など)に見られる高度な石器製造技術。

高度な打製石器技術

 せきじんぎほう。ホモ=サピエンス(新人)に属するクロマニヨン人などの遺跡からみつかる石器の製造技術で、石の面に連続して打撃を加え、多量の石刃を剥離させ方法。旧石器時代の後期旧石器文化にあたる。ヨーロッパでは4万年ほど前に始まる技法で、その文化をオーリニャック文化と呼んでいる。<今西錦司他『世界の歴史1 人類の誕生』1989 河出書房 図版はいずれもp.41より>
 さらに石刃を細かく加工し、木器や骨角器と組み合わせて使用する細石器の段階へと進む。これは狩猟技術の向上をもたらしたが、おそらく狩猟に適さない地域では同時に食糧の不足をもたらすことになり、そのために食糧を自給する農耕・牧畜が生み出された。それは打製石器に対して磨製石器土器を指標とする新石器時代の到来となって現れている。