土器
粘土を整形して焼き固めて器物を作る新石器時代の指標となる人類の技術。
新石器時代の指標
粘土を使って整形し、火で焼くことによって硬度をたかめ、さまざまな容器とする技法。素焼き地の上に酸化鉄による赤や黒や白で模様を描いた彩文土器は、メソポタミア・エジプト・インド・中国に共通に見られる。土器の出現は、磨製石器とともに、新石器時代の始まりを示しており、一般に食物加工(煮沸など)と食物貯蔵の用具と考えられているので、農耕・牧畜の生産経済に入ったことを意味している。 → 文明Episode 縄文式土器は世界最古?
土器の起源はその時期、場所など、まだ不明な点が多いが、約一万三千年前にさかのぼるとされる日本列島の縄文式土器も、世界最古の部類であることは興味深い。一般に、土器の発生は新石器時代への移行の指標となり、農耕の発生と関連づけられているが、日本の縄文文化は其の発生時期には農耕の発生との関連は無い。農耕と結びつかずに発生した縄文文化は世界史的には独自の新石器文化と言うことが出来る。(引用)日本列島で最古の土器である縄文土器は、これまでの研究によればいまから約1万5000年をさかのぼるある時点とされている。この年代は西アジアや中国に比べ例外的なほどに早く、朝鮮半島と比較しても数千年も早いと考えられてきたが、最近、中国で二万年前の土器が発見されており、縄文土器を世界で最古の土器とする考えはゆらぎ始めている。しかし、草創期と呼ばれる最初期の縄文土器が出現して以来、日本列島では充実した、変化に富んだ土器形式の展開があり、このきわめて早い土器出現とその後の長期にわたる展開期間の特殊性を補完していると考えることも可能である。<青柳正規『人類文明の黎明と暮れ方』興亡の世界史① 講談社学術文庫 p.154>縄文土器の出現が、世界最古ではないにしても、朝鮮半島よりも早かったのは何故か、という点については、日本列島上の縄文文化を担い手であった人々は、シベリア東部からカムチャッカ、千島、樺太に懸けて発達していた細石器と呼ばれる鋭い石器(細石刃)を有した新石器時代に先立つ中石器時代の人々だったのではないか、という説を紹介している。