エウリピデス
古代ギリシアの三大悲劇作者のひとり。前5世紀後半、『メディア』などの作品を残している。
アテネで活躍したギリシア悲劇の作者であり、アイスキュロス・ソフォクレスと並んで三大悲劇作者の一人とされる。ソフォクレスより若いが没年は同じ前406年であった。ソフォクレスに比べて大衆的な人気はなかった。代表作は『メディア』、『バッカスの女たち』などで、古い伝統にとらわれず、世相を反映した台詞を取り入れ、現実に切り込むような作風であった。
Episode エウリピデスが酩酊した話
ローマ時代(2~3世紀ごろ)の著述家アイリアノスの『ギリシア奇談集』は、ギリシアのポリス時代のさまざまな逸話を伝えているが、その中にエウリピデスのこんな話もある。(引用)アルケラオス王(5世紀末のマケドニア王)が親しい友人たちのために盛大な宴会を催した時の話である。酒杯を重ねるうち、普通より強い酒を呑んでいたエウリピデスは、次第に酩酊に陥っていった。そのうちに同じ席にいた悲劇詩人のアガトンを抱いて接吻した――既にほぼ四〇歳の年配に達していたアガトンにである。アルケラオスが、あなたはアガトンをまだ恋しい相手だとお考えですかと尋ねると、エウリピデスが答えて、「そうですとも、美しいものがいちばん美しいのは春ばかりではありません、秋だってそうなのですよ」と言った。<アイリアノス/松平千秋ら訳『ギリシア奇談集』岩波文庫 p.230>