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パンテオン

古代のローマ文化を代表する神殿建築。現存するのは118年にハドリアヌス帝が再建したもの。

ローマのパンテオン
ローマのパンテオン
(トリップアドバイザー提供)
 パンテオンの“パン”は「すべての」、“テオン”とは「神々」を意味するので、“すべての神々を祀る神殿”となり、「万神殿」とも訳されている。本来は、内陣を取りまく壁の7ヶ所に神々の像が安置されていた。その内陣は直径43.3m(外径は57m)の円堂で、天井は半円球のドームになっている。正面には基盤と柱頭がギリシア産の大理石、柱身がエジプト産の御影石の一本作りからなる8本の円柱が三角破風を支えている。
 パンテオンはローマのカンプス・マルティウス(マルスの丘)に、現在も建造時とほぼ同じ状態で残っており、ローマ帝国全盛期の五賢帝の一人、ハドリアヌスが再建した神殿。コロッセウムと並んでローマ文化の栄光を物語る代表的な建築である。

パンテオンの建造者

 パンテオンは19世紀末まではアグリッパ(アウグストゥスに仕えた部将。それを支えてローマ帝国の発展に寄与した)が建設したものと信じられていた。パンテオンの正面に「アグリッパが第3回執政官のとき建造」と碑文が刻まれているからであった。しかしその後の研究によって、現在のパンテオンはハドリアヌスによって建造されたものであり、アグリッパのつくったパンテオンは80年の火災で焼失したことが判明した。その後、ドミティアヌス帝が再建したパンテオンも110年の落雷で焼失した。ハドリアヌスは即位の翌年の118年にパンテオンの再建に着手した。<青柳正規『皇帝たちの都ローマ』1992 中公新書 p.297>

パンテオンの大円蓋

 神殿正面にはギリシア風の花崗岩の列柱が並び(上の写真)、その奧の巨大な青銅の両開きの扉(高さが約12.5m、重さが60t)を開けて中にはいると、巨大な円蓋の頂上の約9mの直系のある円い明かり取りから光が降り注ぐ。この円蓋の直径は約43mあり、これはかつて建造された石造りの円蓋としては世界最大である。現代のローマのサンピエトロ大聖堂より約60cm、フィレンツェ大聖堂より約1.5m、ロンドンのセントポール大聖堂より約9.6m長い。<フィリップ・マティザック/安原和見訳『古代ローマ旅行ガイド』2018 ちくま学芸文庫 p.36-38>