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ジャーティ

インド社会に生まれた、世襲の職業集団で、他の集団との通婚、会食などを排他的に禁止しながら、村落社会で浄・不浄の観念によって序列化が進んだ。その際下層は不可触民として差別されていた。

 一般にカーストを説明する際、基本となる4つのヴァルナがあり、さらにジャーティの中で職業ごとに多数のジャーティが形成されたとされ、前1000年頃のアーリヤ人のガンジス川流域への進出以来、長い時間をかけて形成されてヴァルナとジャーティは不可分な身分制度となり、それがインドにやってきたポルトガル人によってカースト制と名付けられ、ヨーロッパにも知られるようになった、と説明されている。
 しかし、現在ではヴァルナ=ジャーティ制度を、本来のカースト制そのものであったという理解はされないようになっている。またヴァルナとジャーティも本来は結びついていたものではなかったと考えられるようになっている。歴史的な経緯では、ヴァルナは前1500年頃から始まるアーリア人社会の残したヴェーダ文献の中に現れるのに対して、ジャーティはヴェーダ文献には見られず、中世インドにおいて10~11世紀頃に形成された職業世襲制度とされるようになっている。 → カーストの歴史を参照。

ジャーティの意味

 ジャーティとは「生まれ」を意味し、身分としてのヴァルナ(種姓)と結びき、さらにヒンドゥー教の浄・不浄の観念から、それぞれに上下関係が生まれ、互いに通婚することなく、また食事などでも他のジャーティと同席できないなどの規制を持つようになった。そのようなジャーティは約3000に上ったという。現在ではポルトガル語に由来するカーストは「血統」の意味であり、カーストをジャーティと道義として説明することが多くなっている。山川出版世界史用語集では「カースト(ジャーティ)」として一項目扱いであり、実教出版必携世界史用語ではジャーティの項目のみでカーストの独立した説明はない。<2024年8月>
 実際の社会では、ヴァルナの中ではバラモンの血統は長く社会の支配層・知識人層として続き、現在もその血統にあるものは経営者や政治家、法律家、学者などの豊かで権威のある家系となっていることが多い。しかし、クシャトリアとバイシャ、シュードラの区別はすでに実態はなく、問題となるのは多数存在するジャーティであり、その中の最下層の不浄な仕事に就いていることで差別されている不可触民の存在である。現代のカースト問題とは「不可触民」の問題であると言っても良い。