ゼロの概念
インドに始まるとされる記数法。グプタ朝時代の「ゼロの発見」に始まり、6世紀ごろには確立し、アラビアを経てヨーロッパに伝えられ、数学その他の文化に影響を与えた。
名著とされる吉田洋一氏の『零の発見』(岩波新書 1939年)によれば、「零の発見」はインドのグプタ朝時代(4~5世紀)においてであった。6世紀頃に位取り記数法が行われるようになり、7世紀初めごろのインドの数学者ブラーマグプタの書物には、「いかなる数に零を乗じても結果は常に零であること」、また、「いかなる数に零を加減してもその数の値に変化がおこらないこと」という零の性質が記載されているという。
アラビアへの伝播
このようにインドで使われるようになった「ゼロの概念」は、便利な記数法としてアラビア人の手をへて十字軍やイベリア半島でヨーロッパに伝えられ、それまでのローマ数字の記数法に代わって「アラビア数字」として用いられるようになった。1202年にピサのレオナルドという人物がインド記数法とそれによる商業算術をヨーロッパに伝えたという。その記数法は、紙の使用とともに急速に広まった。<吉田洋一『零の発見』岩波新書 p.20-51>