象徴主義
19世紀末、フランスで盛んになった文学の一派。科学的合理性や写実を否定し、象徴的手法で物事の真の姿を暗示する作品を生み出した。
象徴主義の文学
象徴主義 symbolism とは、文学においては自然主義文学への反発から起こった文学思潮であり、代表的な存在は、フランスの詩人ボードレールであろう。ボードレール(1821~67)はパリで活躍した詩人で、1857年に発表した『悪の華』が最もよく知られている。彼を筆頭に、マラルメ(1842~98)、ヴェルレーヌ(1844~96)、ランボー(1854~91)といった世紀末に活躍した詩人はいずれも象徴主義に含まれる。フランスの象徴主義の文学の時代と、ほぼ重なり、同じように自然主義に反発したところから出発したイギリスのワイルド(1856~1900)は、一般に耽美主義と言われている。この二つの文学思潮は、時期的にも、作風の上でも重なっている。象徴主義の美術
また、美術の世界でも、19世紀の末に、自然主義・写実主義に批判的な画家が現れる。その中に象徴主義と言われる一派があり、代表的な画家はモロー(活躍したのは1860~80年頃)で、その系統で21世紀初頭までいたのがクリムト(活躍は1880~1910年頃)・ムンク(同じく1890~1920年頃)である。この世紀末と言われる時期には、美術界には印象派もまだ残っており、さらに印象派から派生した後期印象派(ポスト印象主義)・ラファエロ前派なども同時に活躍していた。この中で、日本ではクリムトとムンクが特に「世紀末芸術」として人気が高い。一方、美術界では19世紀末から20世紀にかけて、より洗練された装飾的な意匠を用いたアール=ヌーボー(安良らしい芸術の意味)といわれる動きが絵画以外の建築やガラス工芸で盛んになり、商業的な成功を収めていった。
これらの美術様式の区分には流行の時期があって世界史教科書でもそれを反映している。旧課程・旧版の用語集には象徴主義は一項立てられていたが、アールヌーヴォーは見られなかった。ところが現行の用語集には象徴主義が消えて、アールヌーヴォーが掲載されている。