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世界保健機関/WHO

国際連合の専門機関。世界の建康、保険事業を推進、調査を行う。21世紀に入り新たな感染症が多発し、その対応に迫られている。

 World Health Organization 略称WHO。国際連合の専門機関の一つ。1948年設立、本部はスイスのジュネーヴ。世界のすべての人々の身体的、精神的健康水準の向上、国際的保健事業の推進、調査・研究を行う機関であり、194ヵ国(2019年現在)が加盟している。

天然痘の根絶

 天然痘は致死率20~40%のウィルスによる伝染病で、人類は長い間戦ってきた感染症の一つであった。高熱の後に全身を覆う発疹が出て、命をとりとめても失明の恐れがあった。東北の武将伊達政宗が右目を失ったのはその後遺症だという。中米・アステカ王国が16世紀に滅亡したのはスペイン人が持ち込んだ天然痘が一因だったと言われている。対抗手段が出来たのは1796年5月14日のイギリスの医師ジェンナーが種痘を試みてからだ。
WHOによる天然痘根絶宣言 20世紀中盤、発展途上国の乳児死亡の半分は天然痘が原因だとも言われた。WHOは1958年に天然痘根絶をいったん決議、だが成果が上がらず、67年に新しい根絶計画が始まった。天然痘は人から人にうつるので、まず徹底的に患者(発疹の出ている人)を見つけ出し、その周辺の約50人に集中接種していった。良質なワクチンと、簡単かつ確実に接種できる二叉針が考案され、接種が進んでいった。1973年段階ではインド、パキスタン、バングラデシュに13万人の患者がいたが75年ごろまでに消えた。ついで「アフリカの角」とよばれるエチオピア、ソマリア、ケニアで1977までに消滅させた。78年にイギリスの研究所でウィルスの漏出事故が起きたものの、WHOは1980年5月8日に根絶宣言を出した。日本人医師で厚生省からWHOに転じ、世界天然痘根絶対策本部で活動した蟻田功さんは、「天然痘の根絶には幸運もあった。当時は世界的な紛争や戦争の切れ目。活動が中断されることはなかった」と振り返る。
新たなバイオテロの恐れ 2001年の同時多発テロの後、世界は天然痘ウィルスを使ったバイオテロにおびえる。日本は76年に義務的なワクチン接種は取り止めており、若い世代には免疫はない。その頃、開発された重い副作用のないワクチン製造が2002年、ほぼ4半世紀ぶりに再開され、約一千万人分が国内に備蓄されている。<朝日新聞 2007/4/30>

2020年の危機

 21世紀に入り、エイズ、SIRS、鳥インフルエンザ、デング熱、エボラ出血熱などの世界的な流行に対処する任務が重要になっきたが、特に2020年に戦後最大の世界的流行(パンデミック)となった新型コロナヴィールス(COVID-19)は、WHOの対応についてさまざま事が議論された。
 新型コロナヴィールス感染症はすでに2019年12月に中国の武漢で蔓延が始まり、急速に世界中に拡がって都市封鎖に踏み切るところも増え、日本もふくめて深刻な事態が拡がった。それに対していち早く流行を押さえることに成功した台湾がWHOに加盟していないため、WHOでは十分状況を把握することが出来なかったのではないかと言われている。パンデミックが全世界に拡がり、アメリカにおいても3月~4月に感染者が急増すると、トランプ大統領はWHOの対応の失敗として厳しく非難、その原因をWHOが中国から多額の支援を受けていたので武漢発の感染症であることを隠そうとしたのではないかと述べた。貿易問題で中国と対立状態にあったアメリカのトランプ大統領は、さらにWHOが公衆衛生上の公正な対応よりも中国寄りの政治的判断を優先しているとして拠出金の提出を拒否し、ついに7月6日、2021年7月6日にWHOを脱退すると国際連合に通告した。
 人類共通の課題である新型コロナヴィールスとの戦いの司令塔であるべきWHOが、はたしてどうなるのか、我々はヴィールスとの戦いの前にアメリカと中国の対立、トランプとWHOの対立に脅かされている。トランプの退陣は2020年の11月の選挙で決まったにもかかわらず、それを認めない現職大統領が支持者に向かって議事堂に向かうことを呼びかけるなどの大混乱の中で2021年1月20日、新大統領就任を迎えるが、新種のコロナヴィールスの感染拡大が猛威をふるい続けており、世界は混迷の度合いを深めている。<2021/1/15記>

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