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アフラ=マズダ

ゾロアスター教の主神で、善の神、光明の神、創造主とされる。暗黒神アーリマンとの闘いを続け、最後に勝利する信じられた。

 イスラーム化する以前のイラン(ペルシア人)における主たる宗教であったゾロアスター教の教典「アヴェスター」によれば、アフラ=マズダは最高神であり、宇宙を創造し神々と聖霊をはじめもろもろを統制する。この世の光と善とはこの神から発する。そして宇宙のあらゆる現象は光と闇、善と悪の対立抗争であり、アフラ=マズダの聖霊であるスベンタ=マイニュと暗黒の神アングラ=マイニュ(アーリマン)とが激しい戦いを繰り返している。天地の創造から1万2000年、ゾロアスターの時代から3000年を経て世の終末がおとずれ、アフラ=マズダとアングラ=マイニュの間で最後の決戦が行われ悪の全軍が滅び、最後の審判が行われて天上と地上に善の国が建設され、新しい不滅の世が始まるとされている。<村上重良『世界宗教事典』1987 講談社学術文庫版 2000 p.47-48>

ゾロアスター教の光明神

 アフラ=マズダを最高神として創出したのはゾロアスター(ツァラトゥストラ)であり、彼がアフラ=マズダから授けられた啓示が『アヴェスター』であるとされている。アヴェスターではアフラ=マズダ、またはマズダ=アフラーとも言われており、「(一切を)知り給う」という意味に帰着する。この主神アフラ=マズダに陪接する神格として、①スプンタ・マンユ(聖霊)、②ウォフ・マナフ(善思)、③アールマティ(随心)がある。さらに④アシャ(天則)、⑤クシャスラ(王国)、⑥ハルワタート(完璧)、⑦アムルタート(不死)が陪神として存在する。<伊藤義教『アヴェスター』2012 ちくま学芸文庫 p.217>
火の崇拝 火は天則によって力あるものとされているように、アフラ=マズダの、正邪をわかつ正・義の可視的顕現として特に重要視された。火はアフラ=マズダの子であるともされ、これを通して主を崇拝するゾロアスター教徒が拝火教徒と呼ばれるのも、理由のないことではない。<伊藤義教『同上』 p.225>

Episode マツダはなぜMAZDAか

 日本を代表する自動車メーカーのマツダの社名は創業者の松田重次郎の姓からなづけられたものであるが、その英文表記をヘボン式のMATSUDAではなくMAZDAとされている。これは同社が海外が進出したときに、創業者の姓と西洋でも西アジアでも光の神として知られていたアフラ=マズダにひっかけて採用したという。‘社名「マツダ」は、西アジアでの人類文明発祥とともに誕生した神、アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来する。この叡智・理性・調和の神アフラ・マズダーを、東西文明の源泉的シンボルかつ自動車文明の始原的シンボルとして捉え、また世界平和を希求し自動車産業の光明となることを願ってつけられた。それはまた、創業者の松田重次郎の姓にもちなんでいる。 → 参考 マツダ・ホームページ

Episode 日本も明るくしたアフラ=マズダ

 なお、かつて東芝が発売していた「マツダ電球」というブランドも、アフラ=マズダから命名された。エジソンは電球の明るさと寿命を長くしようとして日本の竹をフィラメントの素材にしたことで知られているが、彼はそれを事業化しゼネラルエリクトリック社(GE)を創業した。GEでは1911年にタングステンをフィラメントに使用する技術を開発、これが白熱球の最初であり、それが光の神アフラ=マズダに因み「マズダランプ」と名付けられた。この白熱球によって電球の寿命が飛躍的に延び、まさに世界から闇をなくすような勢いで普及した。エジソンの下で学んでいた日本の電気事業の草分けの一人、藤岡市助はGE社と契約して同年、日本でも白熱球の製造を開始し、それを「マツダ電球」として売り出した。藤岡の東京電気はのちに芝浦電気と合併して東芝となり、マツダ電球も長く東芝の主力商品となっていった。この東芝の白熱球マツダ電球は、2010年3月17日に製造を終了、99年の歴史に幕を下ろした。蛍光灯やLSD電球の普及によって白熱球の需要が少なくなったことよるが、天上のアフラ=マズダ神はどんな感想を持っているだろうか。 → 東芝未来科学館ホームページに、“マツダランプ”の由来が説明されています。(藤岡市助ものがたり 3章4)
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ノートの参照
1章1節 カ.古代オリエントの統一
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村上重良
『世界宗教事典』
1987 講談社学術文庫