印刷 | 通常画面に戻る |

マヌ法典

インド古来の生活習慣から生まれたヒンドゥー教の規範の書。

 前2世紀から後2世紀までに成立したヒンドゥー教の法典。マヌとはインド人が考える人間の始祖のこと。ヒンドゥー教の伝播とともに東南アジアにも影響を与えた。全編は12章2685章からなり、単なる法律ではなく、宗教・道徳・習慣に渡る規範となる。カースト制度(ヴァルナ制)に関する婚姻の規則や、財産の相続、など事細かく定められ、ヒンドゥー教徒にとっての人生の指針とされている。<田辺繁子訳『マヌの法典』1953 岩波文庫>

Episode ヒンドゥー教の四住期制度

 『マヌ法典』には、ヒンドゥー教のバラモン・クシャトリヤ・バイシャの上位三ヴァルナに属する男性の人生に四つの段階があると説いている。まず年齢はヴァルナによって異なるがヴァイシャであれば12歳から23歳までの間にバラモンのもとで入門式を挙げ、学生期にはいる。入門式は第二の誕生といわれる重要な通過儀礼で上位三ヴァルナだけに認められるのでこれを再生族という。学生期(原則として12年)にはヴェーダ学習が中心となる。学生期が終わると家に帰り、結婚して家住期となる。この間はカーストの職業に専念し、神々と祖先の霊を供養する。課長としての義務を終えて隠居したのが林住期である。この間は森の中で禁欲・清浄な生活を送る。そして人生の完成を求めるものは最後の遊行期に入る。これは行者となって一人旅立ち托鉢しつつ放浪しながら解脱を得る。これは理想的な男性の一生とされ、現在でも高級官僚や会社の重役だった人が、退職後行者となって放浪している姿は意外に多いという。<山崎元一『古代インドの文明と社会』中央公論社版世界の歴史3 p.138-145>