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バガヴァッド=ギーター

ヒンドゥー教の教義を歌った歌集。

ヒンドゥー教の神々への帰依、信愛によって解脱をとげることを、武人アルジュナと聖神バガヴァッドの化身であるクリシュナが語り合う歌集。「バガヴァッド=ギーター」とは「神の歌」の意味で、バガヴァッドはクリシュナ神の別名でもある。紀元前後に生まれたが、グプタ朝に編纂されたサンスクリット語の文学『マハーバーラータ』に取り入れられ、その第6巻となっている。この詩文は、世界で最も深遠にして美しい哲学的詩歌と言われ、6世紀中頃から始まるバクティ運動では、ヒンドゥー教の聖典とされて多くの注釈書が造られた。また近代以降のインドの民族解放の運動を指導したティラクガンディーらの思想の源流となっているだけでなく、西洋の思想家にも影響を与えている。

補足

 『バガヴァッド=ギーター』は、戦争で殺し合いに直面して悩むアルジュナ(バーラタ族の王子)に対して、アルジュナの乗る戦車の御者に化身したクリシュナ(神)が、自己の欲望や目前の勝利を願うのではなく、人としての本務、つまり神への信愛(バクティ)によって神と一体化することで現世の義務を果たすことも可能であると説く。こんな一節がある。
(引用)成就に達した者が、どのようにしてブラフマンに達するか、私(クリシュナ)はそれをごく簡潔に説くから聞け。アルジュナ。これが知識の最高の帰結である。清浄な知性をそなえ、堅固さにより自己(アートマン)を制御し、音声などの感官の対象を捨て、また愛憎を捨て、・・・・我執、暴力、尊大さ、欲望、怒り、所有を捨て、「私のもの」という思いなく、寂静に達した人は、ブラフマンと一体化することができる。ブラフマンと一体になり、その自己(アートマン)が平安になった人は、悲しまず、期待することもない。彼は万物に対して平等であり、私(クリシュナ=神)への最高の信愛(バクティ)を得る。信愛により彼は真に私を知る。私がいかに広大であるか、私が何者であるかを。かくて真に私を知って、その直後に彼は私に入る。私に帰依する人は、常に一切の行為をなしつつも、私の恩寵により、永遠で不変の境地に達する。・・・<上村勝彦訳『バガヴァッド=ギーター』岩波文庫 p.138>
ここに、梵我一如、バクティ信仰、現世肯定(カーストの規制に従う)などの思想を見ることができる。
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ノートの参照
第2章1節 キ.インド古典文化の黄金期
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『バガヴァッド=ギーター』
上村勝彦訳 岩波文庫