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チムー帝国

アンデス文明の中でインカ帝国に先行して存在した国家。

11世紀頃、ペルー北部のアンデス山地から海岸部に生まれた国家。アンデス文明の地域的文化がティアワナコ・ワリ文化の段階に均質化したが、その過程でオアシス農業の生産力が高まり、各地の勢力の統合が進んでいくつかの国家が形成された。チムー帝国はその一つで、ほぼかつてのモチカ文化の栄えた地域にあたる。都は現在のトルヒーリョ市の近くにあったチャンチャン。チムー帝国は1450年頃、インカ帝国に滅ぼされたが、スペイン人がペルーに入った頃はまだその記憶が残っており、スペイン人の年代記作者(クロニスタ)が採取した記録によって、その王名などを知ることができる。文字のないアンデス世界で、文字で書かれた最初の歴史であるといえる。チムー帝国では階級社会と奴隷が存在し、僧侶や工人などの職業も分化していた。インカ文明に先行して、有名な黒色土器や金銀、青銅、銅の金属製品、現在と同じ織機でおられた美しい綴織など高度が工芸技術を有していた。なお、同じ時期にアンデス南部にはクイスマンク帝国やチンチャ帝国と言われる国家がそれぞれ繁栄していたが、15世紀にいずれもインカ帝国に滅ぼされる。<泉靖一『インカ帝国』1959 岩波新書 p.90-97>