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新聞/ジャーナリズム

17世紀のイギリスに始まり、18世紀に近代的な新聞・雑誌などのジャーナリズムが成立した。

 新聞などのジャーナリズムの発生には、17~18世紀のイギリスで流行したコーヒーハウスと密接な関係があった。ピューリタン革命から王政復古、名誉革命という王党派と議会派の対立の中で成長した中産市民階級(ジェントルマン)は、政治や経済の動向をつねに意識し、情報の収集に努めなければならなかった。その時に情報収集の場となったのがコーヒー・ハウスであり、新聞や雑誌はそこで多くの読者を得、またその発行者もそこで情報を得ていた。コーヒー・ハウスが情報センターの役割を担い、ジャーナリズムはそこから発生したと言うことができる。

新聞の登場

 イギリスで初めて新聞が発行されたのがいつかということは、はっきりしたことは判っていない。普通は1621年に本屋のトマス=アーチャーが出した『クーラント』が最初の新聞で、アーチャーは「イギリス最初の新聞人」とされている。しかし、それが新聞と言えるものであったか、それ以前に発行されたものがなかったか、問題が残る。
 グーテンベルクによる印刷術の発明によって、まずブロードサイドと呼ばれる一枚の大きな紙の片面に大事件や戦争の記事を印刷したしたものが現れた。1594年にはケルンで『メルクリウス・ガロペルギクス』という小冊子が、神聖ローマ帝国の外交、軍事に関する報道を行っており、イギリスでも売られた。しかし発行は不定期であったので、イギリスではニューズペーパーとは呼ばれず、ニューズブックと言われていた。それに類したものがイギリスでも発行されていた。アーチャーが1621年に出したのはフォリオ版(全紙・二つ折り)で両面印刷され、新聞(ニューズペーパー)に近い体裁をしていた。
 1640年代に同じような新聞が数多く発刊されるようになった。1644年のはじめにはロンドンで12種類の新聞が売られていたが、当時の人口50万のうち、成人男子の半分ぐらいは字が読めたと推定されるので、6万人ぐらいは新聞読者になる可能性があったが、発行部数は、新しい新聞でせいぜい250~500ぐらいだったというから、あまり多いとは言えない。しかし、実際の新聞はコーヒーハウスに置かれ、回し読みされたから、もっと多くの人の眼に触れたであろう。

ジャーナリズムの発生

 1660年の王政復古後、イギリスの新聞ジャーナリズムは急速に活発化した。ヘンリー=マディマンという人物が国王擁護の立場から毎週月曜日に16ページ仕立ての新聞を発行し、コーヒー・ハウスで回し読みされた。1665年、ロンドンでペストが大流行したため宮廷がオクスフォードに一時的に移ると『オクスフォード・ガゼット』を出し、ペストが治まって宮廷がロンドンに戻ると『ロンドン・ガゼット』と名を変えた。オクスフォード・ガゼットは官報的な内容に加えて一般のニュースも載せたので、近代ジャーナリズムの発生と見ることができる。
 1680年、チャールズ2世はあらゆる新聞の規制は国王特権であると布告し、以後『ロンドン・ガゼット』のみが政府の許可を得た正式な新聞であるとされた。名誉革命後の1695年にはある程度新聞発行の自由が認められ、トーリ系ホィッグ系の新聞が発行されるようになった。1702年3月11日には、イギリス最初の日刊新聞『デーリー・クラント』が発刊され、その他多くの都市でも新聞の発行が相次いだ。この時代も新聞はコーヒー・ハウスに置かれ回覧されていた。

雑誌の隆盛

 新聞に対し、雑誌では本格的なものの出現は18世紀で、最初は1704年にデフォーが『レビュー』の創刊である。当初は週1回であったが1712年以降は月・木・土曜日の週3回となり、デフォーひとりで執筆編集された。日本では『ロビンソン=クルーソー』の作者としてしか知られていないデフォーであるが、精力的なジャーナリストだったのであり、生涯のうちどれだけの分量の著述を行ったか正確にはつかめていない。デフォーの政治的立場はホイッグ派であり、その視点から政治と経済、特に商業と貿易についての記事が極めて多い。それに対抗したのがスウィフトの『エグザミナー』であり、これは明らかにトーリー派の立場から記事、論評が書かれていた。
 これらの政治色の強い雑誌に対して、1709年4月に第1号の出たリチャード・スティール編集の『タトラー』(おしゃべりの意味)は同時代の社会現象を幅広く記事にし、また文芸雑誌という趣もあった。1711年3月には『スペクテイター』が刊行され、政治議論を排し、ゴシップ記事を多く載せながら、洗練された文章で人びとの好奇心を刺激し、近代的な雑誌の先駆けとなった。<以上、小林章夫『コーヒー・ハウス』2000 講談社学術文庫 による>
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ノートの参照
9章3節 エ.成長する市民と文化
書籍案内

小林章夫
『コーヒー・ハウス』
2000 講談社学術文庫