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国際赤十字/赤十字条約

1863年、アンリ=デュナンの提唱によって発足した、戦争や災害による被害者を国境を越えて救難する組織。64年に赤十字条約が締結された。

 アンリ=デュナンはスイス人の実業家で、1859年にイタリア統一戦争のソルフェリーノの戦いを目撃し、戦争で傷ついた兵士たちが放置されているのを見て、敵味方を離れて救助する組織が必要なのではないか、と考えた。またデュナンは、クリミア戦争でのナイティンゲールの活動に強い刺激を受け、戦場での負傷者の保護、救援に従事する国際組織を作ろうと考えた。デュナンの提唱によって、1863年に各国の赤十字社と、赤十字国際委員会が発足した。翌1864年、ジュネーヴ会議において赤十字条約(国際人道法、ジュネーヴ条約とも言う)が16ヵ国で締結され、国際組織として成立した。赤十字国際委員会の任務は、戦争や内乱の犠牲となって傷ついた人に対する保護と援助を行うことと規定された。
 1870年、普仏戦争が勃発して赤十字活動が広く知られるようになり、加盟国が増加した。ヨーロッパ以外でもオスマン帝国が1865年、アメリカ合衆国が1882年、日本が1886(明治19)年に加盟した。
 また、第一次世界大戦後の1919年に、5大国の赤十字社が集まり、平時における救護活動(健康促進、疾病の予防、苦痛の軽減など)にあたる各国赤十字社の連合組織を目的に赤十字・赤新月社連盟を結成した。1927年に赤十字国際委員会と赤十字・赤新月社連盟が連合体として統合され、国際赤十字が発足した。本部はジュネーヴ(デュナンの出身地でもある)に置かれている。
 第二次世界大戦後の1949年にはジュネーヴ4条約、1977年には追加議定書が制定され、現在も各地の民族紛争や内戦で活動している。
 赤十字国際委員会は1917年、1944年、1963年の三度ノーベル賞を受賞している。
 国際赤十字では「人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性」の7原則を掲げて活動しており、国際赤十字の活動でもっとも重要なケースは、外交関係にない国家間の紛争で生じた犠牲者に人道的な救援を行うことであり、現在ますますその価値が大きくなっていると言うことができる。

赤十字の名称

 日本では「赤十字」の名称と、赤い十字の印は何の違和感もなく受け入れているが、これはもともとデュナンの故国スイスの赤地に白十字の国旗を反転させたもの。十字は言うまでもなくキリスト教のシンボルであるから、イスラーム教圏では受け入れられない。そこで、イスラーム圏で考えられたのがイスラーム諸国の国旗によく見られる三日月のマークを使うことであった。これを赤新月というので、こちらは赤新月社となる。現在も正式名称は、赤十字・赤新月社連盟である。ただし、赤十字国際委員会はそのままである。赤十字運動内部でも名称とマーク、特にマークについては議論が何度も起こり、現在では十字でも新月でもない菱形(レッドクリスタル)が正式に認定されている。しかし日本では見かけないようだ。また、ユダヤ教のイスラエルでは赤いダビデの星が使われているという。赤十字国際委員会(ICRC)ホームページへ
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