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トルストイ

19世紀ロシアの文学者。人道主義的な作品を多数残している。代表作は『戦争と平和』など。

 トルストイ(Lev Nikolaevich Tolstoi 1828-1910)は、26歳の1855年、クリミア戦争に砲兵少尉として参加、セヴァストーポリ要塞要塞の激戦の体験を発表して注目を集めた。
  • 戦争と平和』(1864~69)はナポレオンのロシア遠征に題材を採り、ロシア貴族の一群の人間関係を克明に追い、またトルストイ自身の歴史観を随所に展開した壮大な歴史小説で、傑作とされる。長編だが、世界史を学習する上では一読しておきたい。
  • 『アンナ=カレーニナ』(1873~76)は没落する貴族階級の家庭、恋愛を描き、古いロシア社会のモラルを批判している。
  • 『復活』(1898~99)は彼の宗教観に基づいた愛と救済の物語。
 トルストイは1880年代から、近代の科学文明、合理的思考とロシアの伝統的なキリスト教・ロシア正教会の信仰との間の矛盾に悩むようになり、1900年の『生きる屍』では教会への不信を表明するに至った。このことはロシア帝国にとっても許されぬことであったので、政府の働きかけでトルストイはロシア正教会から破門とされた。苦悩の中からトルストイは善と愛による人間の救済を説くようになり、その思想は「トルストイ主義」といわれるようになった。その思想はガンジーの無抵抗主義とともに、20世紀の帝国主義時代への真摯な警告となった。
 以上の作品はロシアの文学者、チェーホフやゴーリキーなどだけでなく、日本の近代文学、特に大正期の白樺派などに強い影響を与えた。
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