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ライト兄弟

1903年、世界で初めて飛行機(ガソリンエンジンを搭載し、プロペラで推進する)を飛ばすことに成功した。

Early media coverage of the Wright Brothers

ライト兄弟の発明を報じる新聞
Wikimedia Commons

 1903年12月17日、ライト兄弟(兄ウィルバー、弟オーヴィル)は、アメリカのノースカロライナの海岸で、はじめてエンジン付き飛行機「フライヤー1号」で空を飛ぶことに成功、20世紀の航空機時代の幕開きとなった。第1回目の飛行は弟が操縦し、飛距離は36m、滞空時間12秒にすぎなかったが、その日のうちに4回の飛行を試み、4回目には兄が操縦して飛距離260m、滞空時間59秒を記録した。
 ライト兄弟の最初の飛行は一瞬のものであったが、ここから始まった飛行機の実用化は、人類の空間認識を一気に改めるほど急速な発達を見せた。人間の移動距離と移動時間を急激に縮めると共に、第一次世界大戦と共に戦争と結びつき、その後軍事目的に急速な改良が進められてて第二次世界大戦では戦争の帰趨を決する武器となり、大戦後はジェット推進の時代を迎え、1968年にはアメリカの宇宙船アポロ11号が人類を月に着陸させるまでになった。それはライト兄弟の飛行からわずか66年目のことであった。

ライト兄弟初飛行の写真

Wrightflyer

1903/12/17 ライト兄弟の最初の飛行 Wikimedia Commons

 右の写真は記念すべき人類史上初の有人動力飛行の瞬間を撮影したものであるが、この有名な歴史的写真には「人類初の偉業」と言う称賛の割には、それとは裏腹に「何ともいえず渺々とした虚ろで孤独な気配」が感じられる。写っている人物は複葉の機体の中央に横臥する兄ウィルバーと、右手に立つ弟オーヴィルのふたりだけで、機体の下方に滑走用のレールとベンチ、台車が写っているだけある。ライト兄弟の成功は、あくまで無名の仕事師たちによる地道な試行錯誤の一過程であったことをこの写真が物語っている。
(引用)それは真の意味で現代的な科学技術システムが整備される前の、今や消えてしまった時代感情の記録であると同時に、兄弟が典型的に体現していた古風でアメリカ的な職人気質の寓意像でもあったといえるだろう。つまり19世紀から20世紀の変わりめという時代に初飛行を成し遂げたライト兄弟の事績は、何かが終わって何かが始まるときの、まさに転換期ならではの両義性を象徴的に表していたのである。<生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』興亡の世界史 初刊2006 再刊2016 講談社学術新書 p.55>
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書籍案内

平田寛編
『歴史を動かした発明』
岩波ジュニア新書

生井英考
『空の帝国 アメリカの20世紀』興亡の世界史
初刊2006 再刊2016
講談社学術新書