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軍産複合体

第二次大戦後の冷戦体制の中でアメリカの軍備増大と産業界が結びついた。アイゼンハウアー大統領は退任演説でその影響増大に警鐘を鳴らした。

 第二次世界大戦後、冷戦が深刻になる中、アメリカ合衆国では核兵器開発が進んだが、同時に戦後アメリカ経済の繁栄と結びついていた。軍需産業と軍部の結合はアメリカ経済を拡大させたものの、経済の軍事依存を高めることになった。アイゼンハウアー大統領は強大な軍隊と巨大な軍需産業の結合という新しい事態を憂慮して、1961年1月退任の際の告別演説で、「軍産複合体が……不当な影響力を獲得しないように身を守らなければならない」「この結合の力がわれわれの自由あるいは民主主義のプロセスを危険にさらすことを、決して許してはならない」と訴えた。
 アイゼンハウアーは1957年のソ連の人工衛星スプートニク打ち上げが成功し、アメリカ国内で宇宙開発を急ぐことが叫ばれたときも、宇宙開発競争が軍産複合体をさらに増大させることを懸念し、58年に航空宇宙局(NASA)を軍部と切り離して設立していた。
(引用)このアイゼンハウアーの警告はむしろ予告となった。以後アメリカの国防予算は拡大し続け、軍産複合体は大きな財源を手にして、政治・外交・経済政策に決定的な影響力を及ぼすことになる。アイゼンハウアーの予告どおり、アメリカ国民の自由と民主主義を脅かす力となっていったのである。<有賀夏紀『アメリカの20世紀』下 2002 中公新書 p.29-30>
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有賀夏紀
『アメリカの20世紀』下
2002 中公新書