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グローバルサウス

 2020年代、南半球に多い新興国が、世界経済や環境問題で発言力を強めたことからグローバルサウスとい割れるようになった。

「課税のための包摂的枠組み条約」の議論

 2023年11月22日、国際連合総会本会議において、課税のための国際協力を「完全に包摂的でより効果的なものとするため」に国際連合枠組み条約の策定が必要であると宣言する決議が、125ヶ国の賛成で採択された。決議によって条約案起草に向けて政府間委員会が設立され、2024年8月までに草案をまとめることとなった。賛成したのは提案国ナイジェリアなどのいわゆるグローバルサウス諸国であり、反対は48ヶ国、棄権9ヶ国であった。反対した諸国は日本も含む経済協力開発機構(OECD)加盟国であり、反対理由は課税の国際的平等化はすでに議論が行われている、という根拠薄弱なものであった。
 公正な課税を目指す国際NGO「税公正ネットワーク」(TJN)は、「富裕国クラブ」であるOECDは60年以上も国際課税ルールに関する意思決定権を独占し続けており、今回の決議は、すべての国参加する国連に意思決定権をうつすこにつながるとして「世界中の人々の利益のためにグローバルサウスの国々がもたらした歴史的な勝利だ」と讃えている。

GAFAのタックスヘイブンを直撃

 今回の決議が標的にしているのはGAFAと称される、Google,Apple,Meta(旧フェイスブック)、Amazon などのアメリカ多国籍企業であり、彼らは法人税負担率をゼロに近く下げられる租税回避地(タックスヘイブン)に子会社を置き、他国で得た利益を租税回避地に移転して課税を逃れている。TJNによると、多国籍企業の税逃れで失われる全世界の税収は年間3110億ドル(約46兆円)に上るという。税逃れへの批判は2008~09年の世界金融危機後に高まり、OECDも対策に乗り出し、21年10月には「包摂的枠組み」として①合算課税(多国籍企業の利益を合算して、その一部を市場国に配分する仕組み)、②最低法人課税(海外子会社の税負担率が15%未満の場合親会社所属国が15%まで課税する仕組み)、に2本柱の解決で合意した。しかしグテレス国連事務総長は2023年7月にOECDの対策は途上国にとって限定的な効果しかもたない、と指摘した。今回の国連決議は、意思の場をOECDから国連に移すことで途上国・新興国や市民社会の意見を反映できると期待されている。<しんぶん赤旗 2024/3/27 すいよう特集による>
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