ハイデルベルク人
ドイツのハイデルベルクで発見された化石人類の一つ。学名はホモ=ハイデルベルゲンシス。ネアンデルタール人と現生人類がここから分かれて進化したと考えられている。
ヨーロッパで発見された化石人骨
ホモ=エレクトゥスがアフリカの外に広がったあと、アフリカに新たに出現した人類がハイデルベルク人(ホモ=ハイデルベルゲンシス)である。はっきりした系統関係はわからないが、おそらくホモ=エレクトゥスの一部から進化し、約70万年前に登場し、約20万年前まで生きていた。その化石はアフリカの他、ヨーロッパや中国でも見つかっている。脳容量は約1100~1400ccで、現生人類に近い。がっしりした体型や高い眼窩上隆起などの特徴はネアンデルタール人に似ている。これらから、ホモ=ハイデルベルゲンシスからネアンデルタール人とホモ=サピエンス(現生人類)が分かれて進化したと考えられている。 → 化石人類発見の経緯
ハイデルベルク人の化石は、1907年、ドイツのハイデルベルク郊外のマウエル採石場で発見された約50万年前の下顎骨が最初で、その後ヨーロッパ各地でいくつか見つかっている。頑丈な頭蓋や目の上の大きな隆起などの原始的な特徴と、1200CCほどの大きな脳、小さめの歯という現代的な特徴の両方が入り交じっており、同様の化石がアフリカでもみつかっているところから、ホモ=エレクトゥスから生まれて、次のネアンデルタール人につながると考えられている。その出現時期は約60万年前とされ、長い間、ヨーロッパ最古の化石人骨と言われてきたが、1994年、スペイン北部のブルゴス郊外、グラン・ドリーナ洞窟で、約80万年前の地層から化石人骨が発見され、その後もハイデルベルク人よりも古い化石人骨が見つかるようになった。これらの関係はまだ定説がないが、研究者の中にはグラン・ドリーナ洞窟などの人骨をホモ=サピエンスの一種とするものも出ている。<内村直之『われら以外の人類』2005 朝日選書 p.8>ネアンデルタール人と現生人類の分岐点か
フランスやドイツで発掘された彼らの時代のものと思われる住居跡からは火の使用の痕跡が見つかっており、180cmの大型投げ槍や、剥片石器を取りつけたと思われる加工された枝なども出ている。このような枝と石器を組み合わせる革新的な技術はハイデルベルク人から始まった。彼らの文化は、狩りをし、住居を建て、火を使い、組合せ道具も作ることができる、というレベルに達してた。ホモ=ハイデルベルゲンシスは約20万年前に消滅する。しかしその形質や、持っていた文化から、彼らがネアンデルタール人となったと考えられている。さらに、アフリカに残った彼らの一部から、ホモ=サピエンス、つまり現生人類(かつては新人といわれた)につながったとも考えられている。<更科功『絶滅の人類史―なぜ「私たち」は生き延びたか』2018 NHK出版新書 p.160-162>