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ノルマン人の北アメリカ到達

コロンブスより500年前の10世紀末に、ノルマン人がアイスランドを経て、北アメリカ大陸に到達していた。先住民と交易も行ったが、定住することはできず、忘れ去られた。

 860年頃、ノルウェーを拠点としたノルマン人(いわゆるヴァイキングたち)がアイスランドに進出、入植を開始した。さらに982年頃アイスランドからグリーンランド植民を開始した。北欧古代文学の「グリーンランド人のサガ」の中で語られていることによれば、ビャルニという男が985年に、アイスランドからグリーンランドに向かう途中、舟を流されて遠く南西に漂流して、見知らぬ土地を目にしが、グリーンランドの一部だと思い上陸せず、また海流に流されてグリーンランドに戻った。

ラルフ=エリクソンの探検

 ついで992年(1000年説も有力)、ライフ=エリクソン(レイフ=エリクソン)がビャルニの見た土地への探検を思い立ち、35人の仲間と出発、北米大陸を目にして、海岸線を何百キロか南下し、最初に上陸したところをヘルランド(板石の地。バフィン湾近くらしい)、さらに南下して上陸した地をマルクランド(森林の地。ラブラドールらしい)と呼び、もっと南下して上陸したところをヴィーンランド(葡萄の地。現在のニューファンドランドらしい)と命名した。彼らは葡萄と木材を積んでグリーンランドに戻った。これが事実であればコロンブスの大陸発見の500年前のことである。その後も大陸には何回かヴァイキングの植民が試みられたがすべて失敗した。グリーンランドのヴァイキングたちもその後、本国との連絡も途絶えてしまい、全滅してしまった。その後もときどき「白いエスキモー」や「金髪のエスキモー」と会ったという難破船の船乗りの話が北欧に伝えられている。<武田龍夫『物語北欧の歴史』1993 中公新書 p.13-14>

ヴァイキングとアメリカ原住民の交易

 ノルウェーからソルフィン・カルルセヴニという男が交易のためにグリーンランドを訪れ、レイヴ(レイフ=エリクソン)のところで冬を過ごした。ヴィーンラント(レイフ=エリクソンが到達した北米大陸の東岸)の噂を聞き、入植目的で家畜もともなってヴィーンラントに向かった。現地に着いたカルルセヴニはレイヴの家を拠点に最初の冬を過ごした。翌夏先住民が毛皮を持って交易にやってきた。カルルセヴニは屋敷のまわりに柵をめぐらし、先住民の欲しがった武器は交換に渡さず、家畜のミルクと毛皮を交換した。秋に再び先住民が毛皮を持ってきてミルクと交換したが、先住民のひとりが北欧人のひとりの武器を取ろうとして殺されたので、先住民は逃げ去った。次に先住民側は攻撃してきたが、北欧人はこれを撃退し、翌春グリーンランドへ戻った。積み荷としてはブドウ、ベリー類、毛皮があげられる。これは『グリーンランドのサガ』の伝える物語である。『赤毛のエイリークのサガ』にも先住民との交易とトラブルのことが語られているが、内容の細部は異なっている。どちらのサガも、肥沃な土地であったが先住民との衝突の危険が大きく、ヴァイキングはヴィーランドでの永住を断念して、グリーンランドへ引き揚げたとされている。
 1968年にカナダのニューファンドランド島北西端で、1000年ころの北欧の建物と同じ建築様式の建物群が発見された。これがレイヴの家とまでは論証することは難しいが、サガの伝える、コロンブスに先駆けたヴァイキングの北米入植の試みの話が本当であったことは証明された。<熊野聰『ヴァイキングの経済学-略奪・贈与・交易』2003 山川出版社 p.59-61>
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書籍案内

武田龍夫
『物語北欧の歴史』
1993 中公新書

熊野聡
『ヴァイキングの経済学
―略奪・贈与・交易』
2003 山川出版社