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ゴッホ

オランダ人。1880年代に活躍した後期印象派の画家。南仏アルルでの風景画、静物、人物画で強烈なタッチの作品を短期間に制作し、狂死した(異説あり)。

ゴッホ『自画像』
ゴッホ『自画像』1887
 Vincent van Goch 1853~1890 ゴッホは19世紀末の後期印象派の画家。オランダのブラバンド州で牧師の子として生まれ、画商や書店の店員、イギリスでのフランス語講師などさまざまな職業に就いた後、鉱山のキリスト教伝道師をへて1880年頃、画家になる決意をした。すでに27歳ぐらいになっていた。オランダ、ベルギー時代の作品は暗い陰鬱な色調で農民や織工を描いたものが多く、1886年にパリにやってきてから印象派を知り、日本の浮世絵の影響も受けて、激しい色彩表現をするようになる。1888年に南仏アルルに移り、ゴーガンとの共同生活にはいるが、精神に異常を来して「耳切事件」を起こし、1890年7月、カラスの群れ飛ぶオーヴェルの丘の上でピストル自殺を試み、数日後に世を去った。<高階秀爾『続名画を見る眼』 岩波新書 p.58-59 など>
 彼の生活は常に弟のテオが援助していたが、テオも兄の死の翌年、発狂して死んだ。『ゴッホの手紙』は弟テオに宛てた手紙を死後にまとめたもの。
作品:多くの『自画像』の他、『ひまわり』(1888年)、『アルルの寝室』(1889年)などの静物、『アルルの跳ね橋』、『糸杉』などの風景画など、代表作はほとんどアルル滞在中の数年間に集中している。右の絵は、ゴッホの自画像の一つ。『アルルの夜のカフェ』(1888)には内面の情感をキャンバスにぶつける、後の表現主義につながる作品となっている。

参考 映画に見るゴッホ

映画『炎の人ゴッホ』 1956年 アメリカ ヴィンセント・ミネリ監督。ゴッホをカーク・ダグラス、ゴーガンをアンソニー・クインが演じた。ゴッホは伝道師として悩み、恋に破れ、画家の道をめざす。しかし結婚も破綻。画商として成功していた弟を頼ってパリに出て、当時の印象派の洗礼を受け、ゴーガンらと知り合う。そしてアルルでのゴーガンとの共同生活が始まるが、その頃から狂気が頭をもたげ、耳切事件を起こしてゴーガンも去っていく。そして孤独のうちに狂気をつのらせていく・・・・。鮮烈な南仏の風景と、ゴッホの作品が明るい色彩で見ることできる。
映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』 2018年 アメリカ・フランス合作 画家でもあるジュリアン=シュナーベルが、斬新な映像と、新たな知見で描いたゴッホの生涯。主演のウィレム・デフォーはゴッホの狂気に迫る快演を見せる。これは迫真の演技というのだろう。アルルの自然の中で美を追い求め、人間の中で苦しむゴッホ。ストレートな伝記映画ではないが、ゴッホとゴーギャンが交わす印象派についての議論も美術史の理解の上で興味深い。2016年に出版されたゴッホのスケッチ帳(オランダのゴッホ美術館は贋作と断定している)や、ゴッホの死因の新説(否定する研究者も多い)が取り入れられており、新たなゴッホ像と言えるだろう。

Episode ゴッホのスケッチ帳みつかる

 2016年にフランスで、126年ぶりに発見されたゴッホのスケッチ帳が出版された。これはアルルに滞在中のゴッホが酒場の帳簿に描いた65点のスケッチで、ゴッホの死(1890年)の後に酒場に戻され、そのまま人知れず保管されたものだという。発見者は間違いなくゴッホが描いたとしているが、鑑定したオランダのゴッホ博物館では慎重に検討して贋作だという結論を出した。しかし発見の経緯に疑点はなく、真作だという専門家も多い。映画『永遠の門』でもこのスケッチ帳が出てくる。日本でも2017年に河出書房新社から出版された。<AFPbb ニュース 2016/11/18

Episode ゴッホの耳のレプリカ

 ゴッホほどエピソードの多い画家はいないだろうが、また謎の部分も多い。その中で最もセンセーショナルなのが耳切事件だろう。なぜ耳を切ったのか、その心の中は測り知ることはできないが、何とその耳のレプリカを作成した科学者が現れた。ドイツの科学者がゴッホの弟テオの子孫から軟骨細胞を提供してもらい、そのDNAと3Dプリンターで作った「生体芸術作品」だという。2014年6月、カールスルーエ美術館で公開されたゴッホの耳(?)は、栄養溶液の中に浸されており、来館者はマイクを使って話しかけることができるという。<AFPbb ニュース 2014/6/5
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DVD案内

『炎の人ゴッホ』 1956
V・ミネリ監督
カーク・ダグラス主演
Amazon Prime Video

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 2019
J・シュナーベル監督
ウィレム・デフォー主演
書籍案内

『ゴッホ絵画集』
近代絵画 Kindle版
2017 アートクラシックス

『フィンセント・ファン・ゴッホ-失われたアルルのスケッチブック』
2017 河出書房新社