スターリング=ブロック
世界恐慌後に構築された、イギリスを中心としたポンドを基軸通貨とするブロック経済の一つ。世界経済のブロック化へのきっかけとなった。
スターリング sterling とはイギリスの法定貨幣(正貨)としてのポンド pound のこと。ポンドはシリング、ペンスと共に通貨の単位であるが、ほかにも重量の単位としても使われるので、通貨を意味するときはスターリングという。記号は stg. または s. で表され、たとえば正貨50ポンドならば、£50stg. となる。ということで、この場合のスターリングとは「通貨としてのポンド」の意味であるので、ポンド=ブロックということもある。スターリングには、法定のとか、真性の、信頼できる、などの意味もある。
世界恐慌からの脱却をめざすイギリスのマクドナルド挙国一致内閣は、緊縮財政の実施、金本位制の停止、保護関税法の導入などの対応策に続き、1932年7~8月にカナダのオタワで連邦経済会議を開催し、帝国内部で相互に輸出入関税率を優遇し合う特恵制度を導入した。これらの政策は、イギリスは19世紀以来の国際金本位制=ポンド制(事実上イギリスのポンドが世界基準通貨とされていた)と、自由貿易主義(圧倒的な工業力で世界経済を支配した)を放棄せざるを得なくなったことを意味していた。
注意するのはカナダ(および後にカナダに編入されるニューファンドランド)が加盟していないことと、イギリス連邦以外の国々が参加していることである。カナダはアメリカ合衆国のドル経済圏と密接な関係がすでにできあがっていたので、首相ベネットはイギリスの経済圏に組み込まれることを警戒し、オタワの連邦経済会議でもイギリスに抵抗していた。そしてスターリング=ブロック発足に当たっては加盟しなかった。一方で、アルゼンチンはこの時期には積極的にイギリスとの結びつきを深め、ポンド経済圏に加わった。
イギリスはこれらのスターリング=ブロックに対して、ポンド決済を通じてイングランド銀行を中心としたシティの金融機関が影響力を強め、「世界の銀行」としての世界経済への一定の力を持ち続けた。しかし一方でカナダのスターリング=ブロックへの不参加に見られるように、世界全域を覆うヘゲモニーではなくなっていることがわかる。
世界恐慌からの脱却をめざすイギリスのマクドナルド挙国一致内閣は、緊縮財政の実施、金本位制の停止、保護関税法の導入などの対応策に続き、1932年7~8月にカナダのオタワで連邦経済会議を開催し、帝国内部で相互に輸出入関税率を優遇し合う特恵制度を導入した。これらの政策は、イギリスは19世紀以来の国際金本位制=ポンド制(事実上イギリスのポンドが世界基準通貨とされていた)と、自由貿易主義(圧倒的な工業力で世界経済を支配した)を放棄せざるを得なくなったことを意味していた。
スターリング=ブロックの構築
そこで、金本位制に代わる国際通貨圏を、ポンドの影響力の強い地域で構築しようとしたのがスターリング=ブロックである。つまりスターリング=ブロックとは「ポンドを基軸通貨とする国際金融体制」であり、具体的にはブロック構成国はロンドンで準備金としてポンドを保有する(スターリング残高)ことが義務づけられた。オタワ会議で成立した関税特恵によって結びつけられた関税ブロックを補完する通貨ブロックがスターリング=ブロックであり、この二つの枠組みによって、イギリスのブロック経済体制ができあがったと言うことができる。スターリング=ブロックの参加国
スターリング=ブロックに参加したのは、イギリス本国とオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アイルランドの4自治領(ドミニオン)と英領インド、海峡植民地などの属領、香港・アデンなどの直轄植民地(これらを公式帝国という)だけでなく、イギリスと密接に貿易・金融関係のあった北欧のスカンジナビア諸国、バルト三国、ポルトガル、タイ(当時はシャム)、イラク、エジプトと、アルゼンチンなどの諸国が含まれていた。注意するのはカナダ(および後にカナダに編入されるニューファンドランド)が加盟していないことと、イギリス連邦以外の国々が参加していることである。カナダはアメリカ合衆国のドル経済圏と密接な関係がすでにできあがっていたので、首相ベネットはイギリスの経済圏に組み込まれることを警戒し、オタワの連邦経済会議でもイギリスに抵抗していた。そしてスターリング=ブロック発足に当たっては加盟しなかった。一方で、アルゼンチンはこの時期には積極的にイギリスとの結びつきを深め、ポンド経済圏に加わった。
イギリスはこれらのスターリング=ブロックに対して、ポンド決済を通じてイングランド銀行を中心としたシティの金融機関が影響力を強め、「世界の銀行」としての世界経済への一定の力を持ち続けた。しかし一方でカナダのスターリング=ブロックへの不参加に見られるように、世界全域を覆うヘゲモニーではなくなっていることがわかる。