印刷 | 通常画面に戻る |

アファーマティヴ・アクション

アメリカで、公民権運動によって1965年に実現した公民権法で定められた、黒人などに対する差別是正措置。大学入学、企業の人事採用などで黒人を優遇すること。

 現代のアメリカ合衆国において、黒人差別に代表される人種・性別などによる差別を積極的に是正する措置のこと(Affirmative Action)。例えば、大学が黒人と女性を優先的に入学させたり、企業が同様に優先的に採用、昇進させることなど。1964年の公民権法の成立によって、連邦政府の援助を受けている機関はこの差別是正措置が義務づけられ、それに違反すると補助金の削減などの罰則が課せられた。最近では白人や男性側から「逆差別」であるという抗議があり、訴訟になっているケースも多く、見直されている。また黒人側からはこの見直しに強い反発も出ている。1996年にはカリフォルニア州の州民投票でアファーマティヴ・アクションを廃止する州法が成立している。

NewS アファーマティヴアクション違憲判決

 2023年6月29日、アメリカ最高裁判所(連邦裁判所)は、従来のアファーマティヴアクションによる大学入学試験における黒人優遇措置を憲法違反であるとの判決を下した。
 今回の判決はハーヴァード大学とノースカロライナ大学(UNC)の入学選考をめぐる2件の訴訟に対して下されたもので最高裁判所(判事9人)はノースカロライナ大学に対しては6対3、ハーヴァード大学に対しては6対2の評決により、二大学における入学選考での黒人優遇措置を憲法違反とした。
 アファーマティヴアクションは公民権運動の高まりによって1964年に制定された公民権法に始まり、半世紀以上進められた人種差別撤廃のための黒人に対する優遇措置であった。しかし近年、優遇措置は平等な選考に反し、白人、おおび優遇措置のとられていないアジア系学生に不当に不利になっていることを主張する団体が訴訟に訴えるようになり、州によっては廃止を決定したところも出ている。
 アメリカ最高裁判所の9名の判事は任期はなく、死去した場合の補充を時の大統領が選考する。現在の判事には前トランプ大統領によって任命された判事を含め、保守派が6人で優勢となっており、3人のリベラル派は少数派だ。保守派優勢の連邦裁判所は、2022年に、女性の中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆して中絶を違憲と判定した。これはキリスト教原理主義者の主張を認めたもので、多くの女性とリベラル派を落胆させた。
 今回の判決についてバイデン大統領は不同意を表明し、厳然と残る差別の解消につながらないと批判、トランプ前大統領は当然の判決として裁判所を評価した。肌の色で入試に優劣をつけるのはアメリカの平等の原則に反すると言う主張をつつけた団体は直ちに入試の是正を二大学に求めたが、具体的な変更措置については未定としている。一方、黒人の中には落胆、怒りが広がっている。彼らは現実的に人種差別があり、それによって経済格差があるために教育の機会均等が実現していない現状から、アファーマティヴアクションは不可欠と主張している。平等と同時に多様性(ダイバーシティ)も大切な理念であるとする意見も根強く、アメリカ社会の保守化という流れの中で、人種差別問題をどう解決していくか、この問題は今後も続きそうだ。
 → BBCニュース japan / 読売新聞オンライン デスクの目
印 刷
印刷画面へ