元の切り上げ
2005年、中国の対米貿易黒字の解消を図るため、ドルに対する元の相場を切り上げた。
2005年7月、中華人民共和国当局は元の切り上げを発表した。これは、アメリカの要請により、対米貿易黒字の解消を図ったもので、中国経済が成長、発展した結果と言うことができる。元は中国の通貨で正式には「人民元」。外国通貨との為替制度は、1994年に「管理された変動相場制」となったが、97年からは1ドル=8・277元の事実上は固定相場制で運用されてきた。中国経済は鄧小平政権の改革開放政策によって急成長し、次の江沢民政権のもと、2001年にはWTOに加盟して市場を自由化、安価な労働力と資源をもとに工業力を発展させ、アメリカや日本に対して輸出を増大させていった。
米中間貿易の変化
特に米中貿易ではこのところアメリカの貿易赤字が続き、アメリカは中国に対し、元の切り上げを要求するようになった。その圧力を受けて、2005年7月、中国当局は元切上げに踏み切り、1ドル=8・11元とし、同時に複数通貨との連動制を採ることを発表した。切り上げ幅が小幅の2%にとどまったこと、完全な変動相場制に移行したことでないことなど、アメリカ側の要求はさらに強まることが予想されるが、元切り上げは中国経済の力が世界経済の中で無視できなくなったことを示し、かつて日本経済が急成長して1971年のドル=ショックでドル切下げ、円切上げが行われたことを彷彿とさせる。世界経済は「ドル・円・ユーロ・元」の4極構造に近づきつつある、と言われている。