印刷 |  通常画面に戻る | 解答・解説表示 |

2013年度 詳説世界史 準拠ノート

Text p.16

第1章 オリエントと地中海世界

第1節 古代オリエント世界

用語リストへ ア.オリエント世界の風土と人々
・a オリエント :ヨーロッパから見てb 「日ののぼるところ」 、つまり東方を意味する。

解説:オリエントの意味

「オリエント」 Orient とは、西欧から見て「東方」、「東洋」を意味する。今日では「中東」とよばれることが多い。なお、「西洋」は、Occident 。世界史の用語としては、「イスラーム以前の西アジア世界」をオリエント世界と言う場合が多い。オリエント世界はメソポタミアとエジプトに分けられ、両地域を結ぶシリア・パレスチナ地方、および周辺の小アジア(現在のトルコ共和国の範囲)とイラン高原が含まれる。
 西アジアの風土 高温で砂漠、草原、岩山が広がる。
  → 羊・ラクダを飼育する遊牧生活と、オアシスでの小麦、大麦、豆類などの栽培。
・大河流域 c 定期的な増水を利用した潅漑農業が発達し、都市文明が発生した。 
  → オリエント社会の特色 宗教的な権威によるd 神権政治  が行われた。
◎学習のポイント 古代オリエント世界の地理的概念をつかもう。

Text p.17

オリエント地域図
 1 メソポタミア    2 バビロニア     3 アッシリア     4 シリア 
 5 パレスティナ    6 アナトリア     7 小アジア      8 エジプト 
 9 イラン高原     a ティグリス川    b ユーフラテス川   c ナイル川 
 濃い色の部分  肥沃な三日月地帯 

先頭へ

Text p.18


用語リストへ イ.シュメール人の都市国家
ウルのスタンダード

 シュメール人の都市国家の一つ、ウルから出土し「ウルのスタンダード(軍旗)」と言われている遺物。シュメール人の風貌とその社会を伝える貴重な資料である。この部分では戦士と戦車が描かれている。当時のメソポタミアでは馬はいなかったので戦車を引いているのはロバと考えられている。

 メソポタミア文明 
・a メソポタミア   = 「川のあいだの地方」の意味。
 前3500年頃から、人口が増加し、神殿を中心に大村落が成立。
  → b 文字 とc 金属器 (銅と青銅器)の普及。
・前3000年頃 神官・戦士・職人・商人などの階層の形成。
  → d 都市 が成立。
 シユメール人  民族系統は不明。
・前2700年頃 a 都市国家 を建設。
 例 a ウル 、b ウルク ラガシュなど。
シュメール文化 d ジッグラト (聖塔)を建設。
 e 楔形文字 の使用(後出)。ウルの軍旗の製作(右図)

先頭へ

用語リストへ ウ.メソポタミアの統一と小アジア
ウルのスタンダード

ハンムラビ法典が彫られた石柱。上部の左に立つのがハンムラビ王。右が法を授けた太陽神である。

 アッカド人  前24世紀にシュメール人を征服した、セム系民族。
・a* サルゴン王  メソポタミアの都市国家を征服し、「四界の王」と称す。
 = 広大な地域を支配する、最初のb 領域国家 の成立。
・*前2150年頃、滅亡し、シュメール人が独立を回復 = ウル第3王朝

解説:シュメール法典

世界最古の法典は従来は次の古バビロニアのハンムラビ法典とされてきたが、最近の研究では、シュメール人のウル第3王朝時代に作られたシュメール法典が最古とされるようになった。最古のものは前25世紀にさかのぼるという説もある。現在ではハンムラビ法典はシュメール法典をもとに、さらに体系化したものと考えられる。
 アムル人  前1900年頃、西北から侵入したセム系民族。
・a バビロン第1王朝(古バビロニア王国) を建設。都バビロン
 前18世紀 b ハンムラビ王  全メソポタミアを支配。
  → 運河・道路網の建設、治水・潅漑工事を進めた。
・c ハンムラビ法典 の発布 その特徴は次の通り。
  王は神の代理者として統治すると定める。
  d 「目には目を、歯には歯を」 というe 復讐法 の規定をもつ。
  身分別の刑罰の適用など。
  → オリエント世界の他の民族にも広がり、旧約聖書にも影響を及ぼす。

Text p.19

C 周辺諸民族の動向  前15~前14世紀の西アジア
・a ヒッタイト  インド=ヨーロッパ語族に属する。前17世紀半ば頃、
  アナトリア(小アジア)に強力な王国を建設。西アジアで初めてb 鉄器 を使用した。
 前1595年 c バビロン第1王朝 を滅ぼす。シリアに進出しエジプト新王国とも争う。
・d カッシート  民族系統不明。イラン高原西部から南メソポタミアに侵入。
    ヒッタイトに代わり、バビロニアを支配。
・e ミタンニ  北メソポタミアからシリアにかけて王国を建設。
  → ヒッタイトに服属する。

解説

前1500年頃までのインド=ヨーロッパ語族の大移動には、他にギリシア人の南下、アーリア人のインド侵入がある。この一連の民族移動は、大筋では、世界史を青銅器文化と都市国家の段階から、鉄器文化と統一国家の段階に推し進めたものであるといえる。
■テーマ メソポタミア文化の特徴
 多神教 の宗教:民族ごとに最高神をまつる。 例:バビロンの主神マルドゥク神など。
  都市国家では主神をまつるa ジッグラト (聖塔)を建設。例:ウル → 教科書p.18写真
 楔形文字 :シュメール人が創造。粘土板に刻み、保存された。
  → オリエントの各民族は言語が異なっても公用文字として前1世紀まで使用されていた。
  → ペルシア帝国で象形文字から表音文字に変化。やがてアルファベット文字が生まれる。
 解読 19世紀にイギリスのb ローリンソン が成功。 → ハンムラビ法典も全文解読された。
3* ギルガメシュ叙事詩  古代バビロニアの英雄を主人公にした世界最古の物語。
  → 「天地創造」や「ノアの洪水」などの『旧約聖書』の原型となった。
 六十進法 :シュメール人が発明。時間、角度の記数法として始める。
 太陰暦 の発明:さらに、d 太陰太陽暦 が工夫され、閏年を入れて実際の季節とのずれを修正。

解説

これらの他、メソポタミアでは占星術が基本となり天文・暦法・数学などに発達し、後世に大きな影響を残している。また、1週7日制が行われたのもメソポタミアにおいてであった。

先頭へ

Text p.20


用語リストへ エ.エジブトの統一国家
 エジプト文明 
・a ナイル川 の定期的増水によって肥沃な土地を形成。
  → "b エジプトはナイルのたまもの "(ギリシアの歴史家c ヘロドトス の言葉)と言われる。
・d ノモス の形成 潅漑農業の開始に伴って形成された、政治的単位。県に相当。
  → *ナイル川下流の下エジプト、上流の上エジプトがまず統合され、次いで全土が統一される。
・前3000年頃、メソポタミアより早く統一国家が成立。王はe ファラオ と称する。
  = 生ける神として専制的な神権政治を行い、そのもとで神官、役人などの国家機構が整備された。
  → 以後、一時的な周辺民族の侵入はあったが、約30の王朝が交替し、紀元前4世紀まで続く。
ネフェルティティ像

アメンホテプ4世の后
ネフェルティティの像

 古王国 
・前27~前22世紀 第3~第6王朝 都a メンフィス (下エジプト)
 b クフ王 らが、巨大なc ピラミッド を建造。
  = 神である王の絶大な権力とともに、高度な文明の存在を示している。
 中王国 
・前22~18世紀 第11~12王朝 都a テーベ (上エジプト) 
 王朝末期にシリアから遊牧民のb ヒクソス の侵入を受け、支配される。
 新王国 
・前16世紀 ヒクソスを撃退、a トトメス3世 はシリアに進出。
・前14世紀 b アメンホテプ4世 の改革 都をc テル=エル=アマルナ に遷す。
  従来の神々の崇拝を禁じ、唯一神d アトン のみを信仰。自らe イクナートン と改名。
  → 一種の宗教改革により、あたらしく自由で写実的なf アマルナ美術 も生まれる。右上図参照。
  → 王の死で改革は後退。次のg* ツタンカーメン 王の時、旧来の信仰を戻る。

解説:アマルナ革命

このアメンホテプ4世の改革は、アマルナ革命と言われている。オリエントで初めて一神教信仰を創出したことで注目されるが、その意図はテーベのアモン=ラー神を中心とした神々をまつる神官の権力を奪うことになった。そのため彼は自ら名を「イクナートン(アトン神に愛されたもの、の意味)」と改名し、国民にアトン神の信仰を強制した。しかしその死後、テーベの神官は反撃し、新王ツタンカーメン(アモン神の姿に似たもの、の意味)はアトン神信仰を捨てた。そのためテル=エル=アマルナで花咲いたアマルナ美術も破壊されてしまった。なおツタンカーメンは「王家の谷」が発掘されて黄金のマスクをつけたその遺体が発見されたことで有名。

・前13世紀 h* ラメセス2世  新王国を復興させ、再びシリアに進出、ヒッタイトと戦う。

Text p.21

■テーマ エジプト文明の特徴
 太陽神ラー を最高神とする多神教。
 → 新王国時代には首都テーべの守護神アメン神の信仰と結びつきアメン=ラー信仰となる。
2.霊魂不滅と死後の世界(a オシリス神 が支配する世界)を信じ、b ミイラ を造り、
  e 「死者の書」 を墓に副葬する。1922年発掘のツタンカーメン王の王墓が有名。
3.文字の使用:絵文字から象形文字に発展、さらに簡素化される。
 d 神聖文字(ヒエログリフ) = 碑文、墓室・石棺に刻まれた象形文字。
 e 民用文字(デモティック) = 簡略化し、民衆が用い、f パピルス に記録された文字。
 解読 1799年 ナポレオンのエジプト遠征の時、g ロゼッタ=ストーン が発見される。
    1822年 フランスのh シャンポリオン が解読。現在は大英博物館に収蔵されている。
    上段に神聖文字、中段に民用文字、下段にギリシア文字で書かれている。
4.実用的学問の発達:灌漑農業に必要な測地術から天文学・i 幾何学 が発達。
  暦法ではj 太陽暦 が用いられる。ローマ時代のユ リウス暦のもとになる。

先頭へ

地図:オリエント世界の変化

オリエント世界の変化 前16世紀~前12世紀(各国の大まかな領域を示しています)

オリエント 前16~12世紀

 ヒッタイト   B カッシート   C ミタンニ   D エジプト新王国   E エラム   F アッシリア 
 ボアズキョイ   2 バビロン   3 テーベ   4 テル=エル=アマルナ   5 スサ 
 アッシュール   7 カデシュの戦い 


用語リストへ オ・東地中海世界の諸民族
・地中海東岸のa シリア 、b パレスチナ 地方 = 海陸交通の要衝として重要。
 エジプトとメソポタミア間の交易路、および地中海への出入口であった。
A 東地中海世界の新しい動き
・前1500年頃 セム語系のa カナーン人 の活動。パレスチナではじめてb 表音文字 を使用。
・前13世紀 c 海の民 の活動。エーゲ海方面から西アジアに侵入した海洋民族(系統不明)。
  → d エジプト新王国 は衰退し、e ヒッタイト は滅亡する。

Text p.22

  → オリエントの情勢が変動し、セム系の3民族=アラム人、フェニキア人、ヘブライ人の活動開始。
 アラム人 
・前1200年頃から、シリアのa ダマスクス を中心に、内陸中継貿易に従事。
・b アラム語 は西アジアの国際商用語となる。c アラム文字 は東方に伝播。
 → 文字と共に西アジアに広がり、アッシリア帝国・アケメネス朝ペルシアでも公用語とされる。
 → へブライ・アラビア・シリア・ソグド・突厥・ウイグル・モンゴル・満洲などの文字の起源となる。
   = アラム人からイラン系のソグド人に、さらにトルコ系諸民族に伝えられた。
 フェニキア人  前15世紀に地中海東岸のウガリットが栄える。→ 海の民によって滅ぼされる。
・前1200年頃 地中海東岸(現レバノン)にa シドン 、b ティルス など都市国家をつくる。
 c 地中海貿易 に活躍。さらにカルタゴなど植民市を建設。ギリシア人と競合する。
・カナーン人の表音文字から線状のd フェニキア文字 を工夫した。 → 商業活動とともに西方に伝播
  →  ギリシア人に伝えられe アルファベット の起源となる。
 ヘブライ人  はじめ遊牧生活、前1500年頃、パレスチナに定住。
 ・民族宗教であるa ユダヤ教 という一神教信仰を発展させる。
  自らはb イスラエル人 と称し、後にc ユダヤ人 と言われるようになる。
■テーマ ユダヤ教の成立
 出エジプト 
・始祖アブラハムの指導の下、民族神a ヤハウェ の啓示を受けb パレスチナ  に移住。
  12の部族が形成される。一部はエジプトに移住し新王国の支配を受ける。
・前13世紀 c モーゼ を指導者としてエジプトを脱出。
 その途中、シナイ山で神からd* 「十戒」 を授けられる。  → ユダヤ教の律法の起源となる。
 へブライ王国   前11世紀末 パレスチナのa イェルサレム を都にし王国を建国。
・前1000年頃 b タヴィデ王  ペリシテ人を破り、王国を拡大。
 その子c ソロモン王 のとき最盛期となる。栄華を誇るも人民は重税に苦しむ。

解説:イェルサレム

イェルサレムはダヴィデ以来のユダヤ人の都。ソロモン王のとき、ヤハウェの神殿が建立され、ユダヤ教の聖地となり”ソロモンの栄華”と言われ、その繁栄は旧約聖書でも語られている。その後イェルサレムは、キリスト教・イスラム教にとっても聖地となった。はじめはこれらの宗教は共存していたが、現在はパレスチナ問題が深刻になり、三つの地域に分断され、抗争が続いている。なお、ダヴィデ王は、ルネサンスのミケランジェロの彫刻で有名。教科書のp.207に写真がある。
C 王国の分裂  前922年頃、ソロモン王の死後、南北に分裂。
・北のa イスラエル王国  (都はサマリア)
 バビロニアの影響で偶像崇拝が強まる → 預言者があらわれヤハウェ信仰を説くようになる。
 前722年 北方のb アッシリア (サルゴン2世)の侵攻を受け、滅ぼされる。
・南のc ユダ王国  (都はイェルサレム)
 前586年a 新バビロニア のb* ネブカドネザル王 に滅ぼされる。
 バビロン捕囚  多数のヘブライ人がバビロンに強制移住させられる。
・このような民族的苦難の中から、民族宗教としてのユダヤ教の信仰を強める。
 前538年 a アケメネス朝ペルシア がバビロンを占領し、ユダヤ人解放される。
 ユダヤ教 の成立 
・a イェルサレム に帰ることを許され、信仰の自由を認められて神殿を再建した。
  → ユダヤ人の神話的宇宙観、民族の苦難の歴史が『b 旧約聖書 』としてまとめられる。
F キリスト教の登場 (詳細は第3節へ)
 ・前1世紀末 パレスチナの地がローマに支配される。形式化したユダヤ教はその苦難を救えず。
  → a イエス 、ユダヤ教の形式化を批判 して、「神の愛」を説く。世界宗教としてキリスト教に発展。
■テーマ ユダヤ教の特徴
1.  一神教   唯一絶対の神、創造主であるヤハウェのみを神とする。
2. 選民思想  ヤハウェと契約を結んだユダヤ人だけが救われると言う思想。
3. メシア思想  メシア(救世主)による民族的苦難の救済を待望する思想。
4.* 律法主義  神に示された律法を厳格に守ることを義務づける。
  参考 十戒
  1.汝は私の他に、何者をも神としてはならない。  2.汝は自分のために刻んだ像を造ってはならない。
  3.汝は、汝の神・主の御名をみだりに唱えてはならない。  4.安息日を覚えて、これを聖とせよ。
  5.汝の父母を敬え。   6.汝殺すなかれ。  7.姦淫をしてはならない。  8.汝盗むなかれ。
  9.隣人について偽証してはならない。   10.汝の隣人の家をむさぼってはならない。

解説:十戒

『旧約聖書』では、出エジプトの途中、シナイ山の山上で、神ヤハウェからモーセに示されたことになっている。有名なものなので参考のためにあげたが、世界史の学習では、1での一神教と、2で「偶像崇拝」が禁止されていることを確認しておくこと。この十戒はキリスト教でも継承されるが、「偶像崇拝」はそのなかで大きな問題になっていく。なお、一神教や偶像崇拝は、イスラーム教とも共通する教義である。

先頭へ

Text p.23


用語リストへ カ.古代オリエントの統一
 アッシリア王国  前2千年紀初め北メソポタミアに起こったセム系民族、
・小アジア・イラン高原(錫を独占)との交易に従事、前15世紀 a ミタンニ に服属。
・前8世紀 b 鉄製の武器と戦車 を用い有力となる。
  → *サルゴン2世がc イスラエル王国 を滅ぼしさらにアナトリア、バビロニアを平定。
 アッシリア帝国 の成立 前7世紀前半 エジプトを征服し、初めてオリエント全土を統一。
・前7世紀後半 a アッシュール=バニパル王  専制君主として支配。全盛期となる。
 帝国をいくつかの属州に分け、総督を派遣、駅伝制を設ける。
 首都b ニネヴェ に、王立のc* 図書館 建設。捕虜・被征服民を帝国内に強制移住させる。
・意義:d 最初の世界帝国 としてオリエント全土を支配し、多数の民族を支配した。  
  → 急激な中央集権化、苛酷な収奪、強大な専制権力に対し支配下の諸民族が反発し、まもなく衰退。

解説:ニネヴェの図書館

アッシリア帝国の都ニネヴェの遺跡から大量の楔形文字を記録した粘土板が出土した。これは「ニネヴェの図書館」と名付けられたが、もちろん現在の図書館のような市民が利用するものではなく、アッシュール=バニパル王が広大な帝国領を統治するために、各地の情報を収集して、租税徴収や戦時の動員に用いたものと考えられている。つまり、アッシリア帝国の情報センターだったわけだ。

 4国分立時代  前612年 アッシリア帝国、滅亡。
・エジブト:エジプト王国が復活 ナイル上流のクシュ王国(黒人王国)・メロエ王国と交易。
・小アジア:a リディア王国  小アジア西部 都はサルデス
  → 商工業の発展 前7世紀に世界最初のb 金属貨幣 を鋳造したと言われている。
・メソポタミア:c 新バビロニア王国(カルディア)  都バビロン カルデア人が建国。
 前6世紀前半 d* ネブカドネザル王 の時、全盛期となり、ユダ王国を滅ぼす。
  → 前586年 、ヘブライ人多数をバビロンに連行。
・イラン高原:e メディア王国  都はエクバタナ(現在のイランのハマダーン)
   → その支配下にあったペルシア人が次第に有力になる。
 アケメネス朝   ペルシア地方のイラン人=a インドーヨーロッバ語族 
・前6世紀中頃 メディア王国の支配を受けていたがアケメネス家の指導のもとで自立。
 b キュロス2世 、メディア・リディア・新バビロニアを次々と征服。
 → 前539年にバビロンを開城。翌年、ユダヤ人をc バビロン捕囚 からを解放。
・前525年 *カンビュセス2世 エジプトを征服し、オリエント全体を統一。
 ダレイオス1世  第3代 アケメネス朝の全盛期となる。
・前6世紀末から前5世紀はじめ 西はエーゲ海北岸から東はインダス川流域に及ぶ大帝国となる。
 祭儀のための首都はa ペルセポリス 、政治上の中心地はb スサ におかれた。

Text p.24

・c サトラップ の任命 全国を20の州に分け、王の代理として任命。行政・治安・裁判をつかさどる。
  → d 「王の目」「王の耳」 を中央から派遣して監督し、中央集権化をはかる。
・金貨・銀貨を鋳造。税制を整え、e フェニキア人 の交易を保護する。
・スサとサルデスを結ぶf 「王の道」 を建設。また帝国内にg 駅伝制 を整備した。
F ペルシア帝国の滅亡  前5世紀初め ギリシア征服に失敗。(a ペルシア戦争  → 後出)。
 前4世紀、反乱が続き衰退。 前330年 b アレクサドロス大王 に征服されて滅亡する。

地図:ペルシア帝国

アケメネス朝ペルシア帝国(大まかな領域を示しています)

ペルシア帝国

 ペルセポリス   2 スサ   3 ニネヴェ   4 サルディス   5 エクバタナ 
 ベヒストゥーン   7 バビロン   8 ダマスクス   9 イェルサレム   10 テーベ 

■テーマ ペルシアの文化

解説:楔形文字の解読

 楔形文字の解読は、ペルセポリス出土の碑文を研究したドイツのグローテフェントによって試みられ、20世紀になってイギリスの軍人のローリンソンが、べヒストゥーン碑文といわれる高い崖に彫られた碑文を解読し、それがダレイオス1世の業績をたたえた碑文であることを突き止めたことで達成された。
1. 楔形文字 の使用:表音化してペルシア文字を作る。
  → 公用語は、ペルシア語・エラム語・アッシリア語の三つが用いられた。
2. ソロアスター教 の信仰 :前7~6世紀ごろa ゾロアスター が創始。拝火教とも言う。
  光の神(善神)b アフラ=マズダ と闇の神(悪神)c アーリマン の闘争ととらえる。
  → d 最後の審判 を説く。ユダヤ教・キリスト教にも影響。中国にも伝わりe 祅教 といわれる。
3.ミトラ神信仰:インド・イラン起源の神秘教団。
  → 光明神ミトラを信仰する密儀宗教としてローマにも伝えられ、f ミトラ教 となる。

先頭へ

Text p.25


用語リストへ キ.パルティアとササン朝の興亡
 ヘレニズム諸国   アレクサンドロスの帝国の解体後のギリシア系諸国家(次章で説明)
 セレウコス朝  シリアに成立。 → 前63年、ローマに滅ぼされる。
 バクトリア   前3世紀なかば、アム川上流(現アフガニスタン)に建国。
  → ガンダーラ地方からガンジス川流域まで進出、ヘレニズム文化を東方に伝えた。

参考:ヘレニズム

 ヘレニズムは、前4世紀にギリシア北方のマケドニアのアレクサンドロス大王が、ギリシアからオリエント世界まで征服した結果として生まれた、ギリシア化された文化のこと。次節のギリシア世界で詳しく学習する。このページの「パルティアとササン朝」も、アレクサンドロス以降のことなので、後回しにして、ギリシア世界を先に学習した方がよい。ローマ帝国、ビザンツ帝国を学習してからでもよい。
 パルティア  前3世紀なかば、a 遊牧イラン人  の族長b アルサケス が建国。
・前2世紀半ば メソポタミアを併合する。都c クテシフォン に移す。
  → d 東西貿易 路をおさえて、領内を通る物資に関税をかけて財源を確保し、繁栄。
・前1世紀なかば、東方に進出したローマのe クラッスス と争う(後出)。
  → 東方の中国の漢王朝とも交渉(中国の文献にf 「安息国」 として現れる)。
・紀元後2世紀 ローマ帝国の軍に都を一時占領される。王位継承をめぐって対立がつづき、衰退する。
 ササン朝  イラン東部のファールス地方にa 農耕イラン人 が台頭。ササン朝ペルシア。
・226年 b アルデシール1世 が建国。都をc クテシフォン に定める。
  d ゾロアスター教 を国教とする。
シャープール1世

馬上のシャープール1世。左で跪いているのがヴァレリアヌス。イランのナクシュ=ルスタムに残るレリーフ。

 シャープール1世  「イランと非イランの諸王の王」と称す。
・260年 a ローマ帝国皇帝b ヴァレリアヌス を捕虜とする。(右図)
 東方ではインダス西岸に進出。c クシャーナ朝 の領土の大半を奪う。
・4世紀末~5世紀 a ビザンツ帝国 との抗争続く。
・5世紀後半、中央アジアの遊牧民b エフタル の侵入を受ける。
 ホスロー1世  在位531年~579年
・557年ごろ トルコ系遊牧国家のa 突厥 と結びエフタルを滅ぼす。
・561年 b ビザンツ帝国 のc スティニアヌス帝 と和平する。
 → ササン朝とビザンツ帝国の激しい抗争のためメソポタミアの東西交通路が衰退し
   代わってアラビア半島で交易に当たっていたd アラブ人 の活動が活発になる。
F ササン朝の滅亡 7世紀なかば、アラブ人の中にa イスラーム教 が成立し急速に勢力拡大。
・642年 b ニハーヴァンドの戦い  に敗れ、ヤズデギルド3世、メルブに逃れ事実上滅亡。
・651年 ヤズデギルド3世、メルブで臣下に殺害されササン朝が完全に滅亡。
  → 意義:c 古代オリエント世界が消滅し、西アジアはイスラーム化した。  (第4章1節)

先頭へ

Text p.26


用語リストへ ク.イラン文明の特徴
・パルティアの時代はa ヘレニズム =ギリシア文化の影響が強かった。
  → 王は「ギリシア人を愛するもの」という称号をおび、公用語はギリシア語とされる。
  → 1世紀頃から、b イランの伝統文化 が復興する。
■テーマ ペルシアの文化
1. ゾロアスター教 :ササン朝で国教とされ、教典「a アヴェスター 」が編纂される。
2.c マニ教 :3世紀ごろマニが創始。ゾロアスター教に仏教、キリスト教を融和させる。
   → 偶像を否定。ササン朝では異端として禁止されたが、北アフリカや中央アジアに広がる。
  → キリスト教世界 a アウグスティヌス や、南フランスのb アルビジョワ派 などにも影響する。
    東方では、中央アジアから唐代の中国にも伝わりd 摩尼教 となる。(後出)
・美術工芸:a 銀器・ガラス器・毛繊物・彩釉陶器   など、工芸技術が発達。
 → b イスラーム文化 に受け継がれる。西方ではビザンツ帝国を経由して、地中海世界へ伝播。
 → 東方では、c 「絹の道」 を通り、南北朝・隋唐時代の中国を経て、日本にも影響を与える。
  例 飛鳥・奈良時代の文化:d 法隆寺 獅子狩文錦、e 正倉院 の収蔵物(漆胡瓶白瑠璃碗など)

先頭へ



前節へ : 目次へ : 次節へ