印刷 |  通常画面に戻る | 解答・解説表示 |

2013年度 詳説世界史 準拠ノート

Text p.75

第2章 アジア・アメリカの古代文明

4節 南北アメリカ文明

用語リストへ ア.アメリカ先住民
・アジア大陸とアメリカ大陸の間のベーリング海峡が地続きだった約3万年前にa モンゴロイド 系の人々が
 北アメリカ大陸に入り、約1万年前には南アメリカ大陸南端に達した。

解説

 アメリカ大陸では猿人、原人、旧人の化石人骨は見つかっていない。氷河時代には海面が現在よりも100mあまり低く、ユーラシア大陸とアメリカ大陸が陸続きだった時期に、ホモ=サピエンス(新人)段階の狩猟民が波状的に北アメリカ大陸に移動した。彼らは約1万年前には南アメリカ大陸南端まで達した。(序章 人類の拡散を参照)
・15世紀末にヨーロッパ人が渡来。先住民をb インディオ (南米)、c インディアン (北米)と呼ぶ。
 はじめてアメリカに到達したコロンブスがこの地をインドの一部と誤解したため。
■ポイント コロンブス以前の南北アメリカ大陸に高度な文明が存在したことを理解する。
 北アメリカ  現在のアメリカ合衆国・カナダ。
・先住民(かつてはc インディアン と言われたが、現在ではネイティヴ=アメリカンというのが一般的)
 が部族社会を形成し、狩猟・採集を中心とした文化が続いた。
・前1000年頃からd トウモロコシ 栽培なども始まる。
 ▲一部では定住して農耕文明に達していた。例 プエブロ文化 コロラド州のメサ=ベルデ遺跡など。

解説

 アメリカのコロラド州にあるメサ=ベルデ遺跡は、北米プエブロ=インディアンが残した遺跡で、10~11世紀ごろ彼らが崖を利用して日乾し煉瓦をくみ上げてつくった高層住宅群。現在世界遺産に登録されている。
 → 15世紀末以降、スペイン人、イギリス人などヨーロッパ系入植者によって破壊された。
 アメリカ大陸の二つの文明圏
・メキシコ高原~中央アメリカのe メソアメリカ文明 と南アメリカ大陸のf アンデス文明 が形成される。
・紀元前2000年頃からd トウモロコシ などを栽培する農耕文化が発展する。
 → ユーラシア大陸の文明とは交流がなく、独自の農耕文明と都市文明を成立させた。
・アメリカ大陸の文明の共通性
 1.高度な石造技術、建築技術を持っていた。
 2.金銀の製造技術は高度だった。しかし、鉄器は知られていななかった。
 3.牛や馬、車輪は知られていなかった。
 4.アメリカ大陸原産の作物:d トウモロコシ ・g サツマイモ ・h ジャガイモ ・i トマト など。
 → 大航海時代にヨーロッパに伝えられ、さらに世界各地に広がる。

解説

 新大陸原産の作物には他に、トウガラシ・ピーマン・インゲン豆・カボチャ・落花生・カカオ・タバコなどがある。反対に旧大陸から新大陸にもたらされた作物には小麦・サトウキビ・米などがある。新大陸には鉄器・馬・車などと共に天然痘やインフルエンザが持ち込まれ、インディオ人口減少の一因ともなった。このような新旧両大陸間のさまざまな交換を「コロンブス交換」という。

アメリカ大陸の古代文明

アメリカ大陸の古代文明
  A アステカ文明 
  B マヤ文明 
  C インカ文明 

  主な遺跡
  1 テオティワカン 
  2 テノチティトラン 
  3 チチェン=イッツァ 
  4 チャンチャン 
  5 チャビン 
  6 マチュ=ピチュ 
  7 クスコ 
  8 ナスカ 
  9 ポトシ銀山 

先頭へ
用語リストへ イ.マヤ・アステカ文明とインカ帝国
■ポイント 前ページの地図で文明圏の位置を確認し、それぞれの文明の特徴を知る。
(1)メソアメリカ文明
・メキシコ湾岸のメソアメリカ文明

 オルメカ文明   紀元前1200年頃までにメキシコ湾岸に成立。
・石造の大神殿、巨大人面彫刻などをもつ都市文明。
マヤ文字

 マヤ文字  

 → 周辺の諸文明(マヤとティオティワカン)に影響を与える。
 マヤ文明  前1000年頃~16世紀  4~9世紀に全盛期
・中央アメリカのユカタン半島を中心に、都市国家を形成。
・ピラミッドを建築(チチェン=イツァ)・20進法を用い、天体観測を行って
 精密な暦法(マヤ暦)を発達させた。
・a マヤ文字 (絵文字)の使用。(右図)
10世紀 メキシコ高原から進出したトルテカ人に押され衰退。

解説

 マヤの天文学は火星や金星の軌道を計算しており、それをもとに精密なマヤ暦をつくっていた。マヤ暦は太陽暦とともに13日と20日とからなる二つの周期を組み合わせた、260日で一巡する独自の暦が用いられていた。マヤ文明は10世紀ごろトルテカ人に攻撃されて衰退した後も存続したが小国に別れて争い、次いでスペイン人の侵入に抵抗を続けたが、17世紀ごろ滅び、忘れ去られてしまった。

・中央アメリカ・メキシコ高原のメソアメリカ文明
太陽のピラミッド

 太陽のピラミッド 

 テオティワカン文明 

・ 前1世紀 メキシコ中央高原。「神々の場所」の意味。
 巨大な石造神殿、a 太陽のピラミッド (右図)など。
・4~7世紀が最盛期で人口約20万を有した。

 ▲トルテカ文明

・6世紀頃からメキシコ高原に成立。
  → 10世紀頃からユカタン半島に進出。
 12世紀頃 メキシコ北部からのチチメカ人の南下始まる。

 アステカ文明   14世紀にチチメカ人の中の一派が有力となり、a アステカ王国 が成立する。

・都b テノチティトラン を建設(現在のメキシコシティ)。テスココ湖の湖上に築かれた。
・神権政治を行い大ピラミッド型の神殿、絵文字、彩文土器などの文明を築いた。15世紀まで栄えた。

16世紀 スペイン人の侵入。1521年 コルテスに征服され滅亡する。

解説

 テノチティトランはテスココ湖の湖上に築かれた湖上都市で、14世紀に建設され、16世紀には人口20~30万におよんだ。1521年、スペインのコルテスによって王宮は破壊され、その上に新たなメキシコ市が建設された。テスココ湖は17世紀から排水工事が行われ、現在は北東部にわずかに残るだけになっている。

(2)アンデス文明
 チャビン文化  前1000年頃、ペルー北部に成立。石造建築の神殿、土器、金属器の使用。

Text p.76

 その後、アンデス地域にアンデス文明と総称されるいくつかの都市文明が成立。

 ▲紀元前後から15世紀までのアンデス世界
・海岸部には1~8世紀にモチカ文化(土器が特色)、ナスカ文化(織物と地上絵で有名)が栄える。

解説

 ナスカ文化はペルーの南部海岸地方に生まれたアンデス文明の地域文化の一つ。トウモロコシなどの栽培と漁業、狩猟を行っていた。最も発達させたのは多彩色彩・造形と絵柄のモチーフ(魚や動物)を有する土器と、木綿と毛織物の織布技術である。巨大な地上絵で有名であるが、まだその意味は解明されていない。
・中央アンデスでは、8世紀にティアワナコ・ワリ文化の都市文明が広がる。
・11世紀には海岸部にチムー帝国(中心地がチャンチャン)が繁栄、金属工芸が発達した。
キープ

 キープ 

 インカ文明   15世紀後半 アンデス高原一帯にケチュア族が興る。
 インカ帝国 の形成。都クスコ。国王は「太陽の化身」とされ、神権政治を行う。
・現在のコロンビア、エクアドルからペルー、チリにかけて支配。人口600~800万。
・駅伝制の整備された道路網の建設。アンデス山中の高地に都市b マチュピチュ を建設。
・文明の特徴:巨大な石造建築、潅漑農業技術を持つ。金、銀、青銅器の金属工芸が発達。
 c キープ による記録(右図)。太陽崇拝など。
 → ▲1530年ごろ王位継承争いから分裂。
16世紀 スペイン人の侵入。1533年、ピサロによって征服され、滅亡する。

解説

 インカとは、もともとクスコに住んでいた部族の名前であったが、この地に侵入したスペイン人が、その国や皇帝をもインカと言ったため定着した。インカには文字がないので正確には分からないが、1200年頃、クスコに小国家をつくり、15世紀の中頃のパチャクチ皇帝の時、アンデス全域にその支配を及ぼした。しかしまもなく帝位継承で争いが生じ、対立が続いた。16世紀、そこに侵入してきたのがスペイン人であった。スペインの侵入とインカ帝国の滅亡は第8章で扱う。

まとめ

 牛・馬・羊・鉄器・車輪・火薬などを知らなかったが、トウモロコシ、ジャガイモなどアメリカ原産の作物は大航海時代にヨーロッパにもたらされ、重要な農作物となった。   

先頭へ


前節へ : 目次へ : 次節へ

ガレオン船
メールボタン