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アルハンブラ宮殿

イベリア最後のイスラーム教国ナスル朝の都グラナダにある宮殿。スペインにおける中世イスラーム建築を代表する建築群である。

 スペインのグラナダに残る、イスラーム王朝ナスル朝の王宮であった建造物。13世紀に建造された、代表的な西方イスラーム文化の遺産である。アルハンブラとはアラビア語のアル・ハムラーから転訛した言葉で、「赤い城」を意味する。緑の丘の上に立つ赤砂岩と赤煉瓦で築かれた建物が美しく映えている。アルハンブラ宮殿は単なる宮殿ではなく、東西720m、南北220mの区域に宮殿、君臣や官僚の住居、モスクや店舗、マドラサ、公共浴場などが含まれており、いくつもの泉を配した中庭が作られている。建物の壁や天井は美しいアラベスク模様のタイルでかざられている。<深見奈緒子『世界のイスラーム建築』講談社現代新書 2005>

Episode 『アルハンブラ物語』と『アルハンブラの思い出』

 アルハンブラを有名にしたのは、文学での『アルハンブラ物語』と音楽での『アルハンブラの思い出』であろう。『物語』は1832年に発表されたワシントン=アーヴィングの作品。アーヴィングはパリ講和条約でアメリカの独立が認められた1783年に生まれ、それを記念してワシントンと名づけられ、6歳の時には本物のワシントン大統領から頭を撫でてもらったという、独立期のアメリカの作家。『スケッチブック』などの作品で知られるが、『アルハンブラ物語』も日本でも人気が高い。アルハンブラを旅行するという形式で、宮殿にまつわるナスル朝の最後のスルタンなどのエピソードをつづったもの。また『思い出』はスペインの作曲家タレルガが作曲したギター組曲でこれまたその哀切なメロディーが日本人には人気が高い。
 → アルハンブラ宮殿の映像と「アルハンブラの思い出」(YouTube)
 → ユネスコ世界遺産リスト Alhambra, Generalife and Albayzín, Granada

世界遺産 アルハンブラ宮殿


アルハンブラ宮殿の全景


正面がコマレスの塔


イスラーム風の装飾


沐浴の間


参考 アーヴィング『アルハンブラ物語』の一節

(引用)このアルハンブラほど、ひとつの時代と、その時代を生きた一民族を特質づけている歴史的記念碑は、他に例がないのではあるまいか。外観はいかつい城塞だが、内部は悦楽の宮殿である。胸壁では戦争が険しい顔で睨み、かとおもえば詩が宮殿の広間の瀟洒な建組みのいたるところに馥郁(ふくいく)と息づいている。ひとは想像をかき立てられ、かつて、イスラム教徒のスペイン(アル・アンダルス)が、いまだに未開状態にとどまっていたキリスト教徒のヨーロッパのただ中で、ひとつの文明の地だった時代――外面は、つねに存亡を賭けて戦い続けたひとつの戦士集団が、同時に文学、科学、芸術に熱中する精神の王国を内包し、この内世界においては、哲学は、精緻にして明晰な学問でありながら、つねに情熱によって培われ、感覚の放恣は、恣意と想像力の知的横溢によって超克されていたあの時代へと、抗(あらが)いがたく連れ出されるのである。<アーヴィング/平沼孝之訳『アルハンブラ物語』下 岩波文庫 p.353-354>
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書籍案内

ワシントン・アーヴィング
『アルハンブラ物語』
上下 岩波文庫
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『アルハンブラの思い出』
演奏 ナルシソ・イエペス