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ストックトン=ダーリントン

1825年、イギリスで初めて蒸気機関車がこの区間を走った。主に石炭を輸送、乗客輸送は少なかった。

 1825年9月27日、スティーヴンソンが実用化した蒸気機関車によって牽引された客車と貨車(35台)が軌道(レール)を走った。これが最初の実用的な鉄道であり、ストックトンとダーリントンの間の約17kmのレールの上を時速約18kmで走ったという。ストックトンとダーリントンはイギリス北東部の小都市。ただし、この軌道は、蒸気機関車だけでなく、馬でも牽けるものであった。
 鉄道が、旅客運搬を主として組織的に営業が開始されるのは、1830年マンチェスター・リヴァプール鉄道であった。

石炭輸送に用いられる

 この最初の近代的鉄道が運んだものは何か。それは、石炭であった。イングランドのダラム炭田の石炭を海岸の港まで運ぶ交通手段としてこの鉄道が建設された。イギリスの鉄道の発達は、石炭業・鉄工業の発展の結果生み出され、鉄道が急速に広がると、車体やレールを製造する鉄工業と、燃料の石炭が大量に必要となり、さらに石炭業・鉄工業を発展させるという相乗効果を生んだ。

鉄道の開通式

(引用)1825年9月27日、ついに開通式の日が訪れた。当時、石炭輸送のための蒸気機関車はあちこちで走っていたが、いずれも私有地内でのことであり、鉄道が開通するといっても、衆目を集めるには至らなかった。しかし、この日は違った。これまでになく大規模な公共鉄道の開通式であり、当時まだあまり公にされていない蒸気機関車なのである。
 とはいえ、蒸気機関車に対してはまだ懐疑的な人も多かった。エルドン郷は「謹厳実直なイギリス人が気狂いになってしまった」と嘆いたし、ジョージ・スティーヴンソンの友人で自らも鉄道技術者であったニコラス・ウッドでさえ、鉄道の急速な普及には消極的であった。……
 沿道には大勢の観衆が集まり、最初の蒸気機関車ロコモーション号に牽引された車列の到着を待っていた。車列の順番は次のとおりである。①蒸気機関車、②石炭と水を積載したテンダー車、③石炭と製粉を積載した六両の貨車、④鉄道会社の役員や株主を乗せた、飾り立てられた客車、⑤乗客用に急きょこしらえた貨車21両、⑥石炭を積んだ六両の貨車。……
 発車の合図がなされ、列車全体が動き出した。馬は野原を横切って蒸気機関車に伴走しようとしたし、人々は走って蒸気機関車を追いかけようとしたが無駄であった。……予定より少し遅れて、一行はダーリントンに到着した。8マイルと4分の3マイル(14km)を65分で走行したことになる。平均時速8マイル(12.8キロ)であった。ダーリントンでは石炭を積んだ六両が切り離され、給水ののち、音楽隊とダーリントンからの乗客を乗せてストックトンに向けて出発した。……<湯沢威『鉄道の誕生―イギリスから世界へ』2014 創元世界史ライブラリー 創元社 p.163-166>