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シラー

ドイツ古典主義文学を完成させた作家、劇作家。『群盗』『ヴィルヘルム=テル』が代表作。ベートーヴェンの第九交響曲の合唱にその“歓喜の歌”が遣われている。

 フリードリヒ=シラー(1759~1805年)は、ドイツの詩・小説・劇作・評論など多方面で活躍した文学者。その位置づけとしては、ゲーテと並んでドイツ古典主義(文学)を完成したと言われることが多い。その主な作品としては、『群盗』、『ヴィルヘルム=テル』、『メアリ=ステュアート』、『ヴァレンシュタイン』などがあげられる。そのテーマは、「理想を求める不屈の精神」であろう。多くは史劇という枠組みの中で、同時代人に精神的自由を喚起するものであった。その処女作『群盗』は封建制度の圧政に対する民衆の怒りを描いたため、領主のカール=オイゲン公によって監禁されるという弾圧を受けた。監禁を解かれてから故郷を捨てヴァイマールに移り住み、ゲーテなどと交流する。

“歓喜の歌”を作詞

 代表作『ヴィルヘルム=テル』(『ウィリアム=テル』)はスイスがハプスブルク家からの自由を勝ち取った歴史に題材を取り、伝説上のそんざいでしかないテルは一躍英雄となり、さらにロッシーニがオペラとしたため有名になった。シラー晩年の1804年の作品であった。歴史家としても一時イエナ大学の教授として、『オランダ反乱史』や『三十年戦争史』を論述している。
 シラーは、ベートーヴェンが作曲した第九交響曲「合唱付き」の第四楽章で歌われる“歓喜の歌”を作詞した人として知られている。現在、年末には、日本中でシラーの詩が高らかに鳴り響くわけだ。シラーはフランス革命に感動し、1785年に「自由賛歌」という詩を書き、ドイツの青年はその詩をラ・マルセイェーズのメロディに乗せて歌ったという。その後書き改めて「歓喜に寄せて」を発表した。現在のものは1803年に一部改訂されたもの。ベートーベンはシラーをよく読んでいたので、1822年に作曲した交響曲第九番の第4楽章にこの詩を引用した。もっとも、最初の三行はベートーヴェンが書き加えたものでシラーの原詩にはない。その後、この「第九」はベートーヴェンの代表作として世界中で演奏されるようになった。
 さらにシラーのこの詩は、1985年にヨーロッパ連合(EU)が発足したとき、ヨーロッパを象徴する楽曲として採用され、「ヨーロッパ連合の歌」となった。その際に、ドイツ語からラテン語に訳されている。
シラー、教科書から消える 2013年から使用される山川出版社『詳説世界史B』から、シラーの名前が消えている。旧版までは本文の中で「ゲーテやシラーが完成した古典主義・・・」という記載があったが、ゲーテは残っているがシラーは消えてしまった。
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書籍案内

内藤克彦
『シラー』
Century Books―人と思想
2015 清水書院