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独占資本 /カルテル/トラスト/コンツェルン

資本主義経済の中で、中小資本が大資本に吸収され、集中が進んで形成される資本の形態。

 資本主義経済では、周期的な好況と不況の波がおこる。不況期には弱小の資本はより大きな資本との競争に敗れ、吸収されていく。その結果、必然的に大資本が形成され、大資本は余剰資本を他業種や植民地に投資し、利潤をあげるようになる。企業は多額の資金を調達するため銀行に依存し、銀行資本が産業資本と結びついて金融資本が形成され、集中と独占が進む。19世紀後半に形成されたそのような大資本を「独占資本」という。さらに独占資本が海外の市場、原料供給地、そして資本投下先として植民地の拡大を求めて国家権力と結びついた段階を帝国主義の段階ととらえる。
 独占資本の形態には、カルテルトラストコンツェルンの段階的な三形態がある。

カルテル

 資本主義経済における独占資本の一形態である企業連合のこと。カルテルは「企業連合」にあたる。同一業種の企業が、資本的には分離していながら、価格・生産量などを協定して、市場の独占を図る形態。1873年の不況の際に、ドイツの鉄鋼や石炭業でカルテルが出現し、以後不況のたびに増加していった。

トラスト

トラスト
議会に圧力をかけるトラスト
 資本主義経済における独占資本の一形態である企業合同のこと。トラストは「企業合同」にあたる。同一業種の企業が、有力企業によって吸収・合併され、同一の資本のもとで合同する独占資本の形態。その典型的な例は、アメリカのロックフェラー家が創立したスタンダード石油会社によるトラストである。トラストの形成は、自由な競争を阻害する恐れがあるところから、アメリカでは1890年のシャーマン反トラスト法以後、何度か反トラスト法の制定が試みられている。
 右図は議会に対してさまざまな業種のトラストが圧力を加えていることを戯画化したもので、鉄鋼、銅、石油、鉄、砂糖、酒、石炭、製紙などの腹の膨らんだ姿のトラストが、議場の背後から議員に圧力をかけている。上部に掲げられた額には、This is a Senate of the Monopolists,by the Monopolists and for the Monopolists! つまり、「独占資本の、独占資本による、独占資本のための議会(上院)」とある。

コンツェルン

 資本主義経済における独占資本の一形態で異種企業が同一資本下に入ること。コンツェルンは、異種業種の企業が、同一資本の支配を受ける、独占の進んだ形態。その例は、ドイツのジーメンス社クルップ社、アメリカのロックフェラー財閥、モーガン財閥などである。日本の戦前の三井財閥・三菱財閥などもそれにあたる。日本では第二次世界大戦後、軍国主義を支えたものとして財閥解体が行われ、独占禁止法でその出現は予防されていることになっている。

独占禁止の諸立法と現代の問題

 独占資本の形成は、公正な自由競争を阻害し、物価騰貴・雇用の停滞を招くとして、早くから反対運動があった。独占の形成を制限する立法は、アメリカで1890年のシャーマン反トラスト法、1914年のクレイトン反トラスト法が制定されたが、いずれも実行力はなく、独占資本の形成は進行した。さらに独占資本は原料と安価な労働力を求めて、国家と結びついて植民地獲得を推進し、またより後進的な地域に余った資本を投資する資本の輸出を国家的な政策と結びついて展開するようになる。特に世界恐慌後は独占資本は国家権力の結びつきが強まり、国家独占資本主義を形成する。
 第2次世界大戦後はそのような国家独占資本主義が世界大戦の直接的な要因となったことから、各国とも立法措置によって制限しており、日本においても戦後改革の一環として財閥解体を行い、独占禁止法を制定した。しかし、20世紀終盤から世界経済のグローバル化が進行して国家の枠を越えた多国籍企業が成長し、また新たで複雑な金融システムが登場しており、21世紀の現代ではそのような存在をどのようにコントロールしていくかが課題となっている。
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