印刷 | 通常画面に戻る |

ローリンソン

19世紀、古代オリエントの楔形文字の解読に成功したイギリス人。

 楔形文字の解説に成功したイギリス軍人。1835年から2年間にわたって、イギリスのイラン(カージャール朝)に対する軍事使節団(当時イギリスはロシアの南下政策を警戒してイランに圧力をかけていた)ローリンソンは、ベヒストゥーン碑文の楔形文字を書き写し、そこで採集した文字を研究して、1847年にその成果を発表した。それは、ドイツ人のグローテフェントの解読を一歩進め、文字の解読のみならず、文法の解明まで成功した。その成果は1961~64年の「西アジア楔形文書集成」で集大成した。

Episode ローリンソンとベヒストゥーン碑文

 イランのザクロス山脈中のベヒストゥーンの絶壁に、巨大なレリーフ像と多くの楔形文字が彫られていることは早くから知られていた。その解読に挑戦したのが、イギリスの青年士官ヘンリー=クレスウィック=ローリンソンであった。彼は1835年から2年間、けわしい絶壁に何度もよじ登り、そこにほられた文字を書き写した。さらに研究を続け、1847年に解読に成功した。その結果、この巨大なレリーフと碑文は、ペルシア帝国のダレイオス1世の戦勝を記念するものであることが判明した。<J.ボッテロ『メソポタミア文明』知の再発見叢書 創元社>

ローリンソン兄弟の功績

 古代ペルシア文字は、ダレイオス1世時代に、急ごしらえで導入された文字であって、ペルシア王が作成する公的な碑文以外には広く浸透しなかった。アケメネス朝ペルシア帝国の崩壊とともに忘れられていた古代ペルシア文字を解読したのが、ヘンリー・ローリンソンだった。ローリンソンはベヒストゥーン碑文を写し取り、そのペルシア語テキストの翻訳も発表した。なお、ヘンリーの弟のジョージはヘトロドトスの『歴史』の翻訳でも名を知られ、ローリンソン兄弟は二人で古代ペルシア史研究の発展に大きく寄与した。<阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』2021 中公新書 p.99>