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ピュロス

古代ギリシアのミケーネ文明期の遺跡の一つ。クノッソスと同じく線文字Bの記された粘土版が出土した。

 ペロポネソス半島南西部にある、古代ギリシアのミケーネ文明の遺跡で、1939年、アメリカのカール=ブレーゲンが発掘に着手した。第二次世界大戦後の1953年に再開された発掘で、330枚以上の粘土版が発見され、クレタ島で見つかっていた線文字Bが記されており、ギリシア本土とクノッソスのつながりがわかった。この線文字Bも解読され、ヴェントリスが解読してギリシア語を表記する文字であるとの説が正しかったことが証明された。 → ティリンスの位置
※前3世紀に小アジア西岸にエペイロス王国があり、その王をエペイロス王、またはピュロス王といったが、このピュロスとは関係はない。

線文字Bが焼け残る

 このピュロスは、ミケーネ時代(前1600年頃~前1200年頃)のギリシア人諸国の一つとして栄えていた。しかし、前1200年頃、おそらく海の民の侵入にともなう混乱の中で東地中海全域に起こった変動がこの地にも及び、なんらかの理由でピュロスの王宮もこのころ焼け落ちた。線文字Bが書かれた粘土板が今日まで残存しえたのはこのときの火事のおかげで、焼きが入ったためその後の三千有余年の年月に耐えられたのであった。<弓削達『地中海世界』新書西洋史② 1973 講談社現代新書 p.29>
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