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アリスタルコス

紀元前3世紀、ヘレニズム期を代表する科学者。天体観測を行い、地球の公転と自転を明らかにし地動説を説いた。

 前3世紀の初め、ピタゴラスと同じイオニア地方のサモス島出身で、ヘレニズム時代の文化の中心地であったアレクサンドリアムセイオンで活躍した、ギリシア人の自然科学者。
 太陽を中心に地球が自転しつつ回転していることを観測にもとづいて推測した。つまり地動説を説いていたのであるが、それは遊星の動きを精密に観測することによって、その動きは太陽を中心としてその周りを回っていると解釈するのが正しいという見解に達したのであった。また、諸天体の日出日没を地球がその軸の周りに一日に一回転すると想定することによって解明した。しかし、当時のギリシアではアリストテレスの権威のもとに、地球を宇宙の中心に据える自然哲学が主流であったので、アリスタルコスの説は広く受け入れられることはなかった。

「古代のコペルニクス」

 ローマ時代になった紀元後2世紀に同じアレクサンドリアに現れたプトレマイオスは、独自の観測結果と古来の天文学を集大成して、地動説を否定し、地球中心の天動説に戻してしまった。その世界観は、後にローマの国教とされたキリスト教の本山、ローマ教会の神中心の世界観と一致するため、絶対の宇宙観とされてゆき、アリスタルコスの地動説はまったく忘れ去られてしまった。16世紀の初め、独自に観測結果を重ねて地動説を唱えたコペルニクスも、アリスタルコスの存在を知らなかったという。この古代において地動説を説いていたアリスタルコスを〝古代のコペルニクス〟ともいう。<A.アーミティジ/奥住喜重『太陽よ、汝は動かず―コペルニクスの世界』1962 岩波新書 p.43>
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