リグ=ヴェーダ
アーリヤ人のバラモン教の聖典であるヴェーダの中で最古のもの。アーリア人のインダス流域進出に伴って成立した神々への賛歌が多く伝承されている。
アーリヤ人の聖典である4ヴェーダの一つで、最も古いとされる聖典。リグは「賛歌」を、ヴェーダは「聖なる知識」を意味している。紀元前1200~1000年頃に編纂され、神々に捧げられた美しい賛歌をサンスクリットの古い言葉であるヴェーダ語で伝承されてきた。インドに侵入してきたころのアーリヤ人の社会を知る上での唯一の資料となっている。
また、インド史ではヴェーダが作られていた時代はヴェーダ時代と言っているが、『リグ=ヴェーダ』で語られる前1500年~前1000年頃を前期ヴェーダ時代という。『リグ=ヴェーダ』を中心とするアーリヤ人の宗教は次第に宗教儀式を発達させ、ヴェーダを暗唱してその儀式を司る祭祀階級が成立し、彼らはバラモンといわれ身分の最上位に置かれるようになる。彼ら祭祀が司る宗教がバラモン教である。
また、インド史ではヴェーダが作られていた時代はヴェーダ時代と言っているが、『リグ=ヴェーダ』で語られる前1500年~前1000年頃を前期ヴェーダ時代という。『リグ=ヴェーダ』を中心とするアーリヤ人の宗教は次第に宗教儀式を発達させ、ヴェーダを暗唱してその儀式を司る祭祀階級が成立し、彼らはバラモンといわれ身分の最上位に置かれるようになる。彼ら祭祀が司る宗教がバラモン教である。
リグ=ヴェーダの構成
『リグ=ヴェーダ』は、膨大なヴェーダ文献の中で、最も古く重要なものとされている。一般的にはリグ=ヴェーダの中の一部であるサンヒターと言われる本集の部分を指している。現在用いられているのは、多くのヴェーダ学派のうちのシャーカラ派の伝えたもので、10巻からなり、1017の賛歌(数え方によっては1028とも)を含む。第2巻~第7巻がリグ=ヴェーダの中核をなしており、第1巻と第8巻はその前後に追加された部分である。第9巻の内容は全く異なり、浄まりゆく酒神ソーマに捧げられた賛歌のみを集めている。第10巻はその言語・内容からして他より新しく最新層をとなっている。リグ=ヴェーダの神々
リグ=ヴェーダはおそらく前1200年頃を中心に編纂され、パンジャーブに侵入してしたアーリヤ人の宗教・神話・生活などを伝える根本資料となっている。アーリヤ人の信仰は明らかな多神教で、天・空・地の三界および水中に住む。天神ディアウス、太陽神スーリア、暁紅神ウジャスなどは天界に属し、風神ヴァーュまたはヴァータ、暴風神ルドラおよびマルト神群、雨神パルジャニアなどは空界に、地神プリティヴィー、火神アグニ、酒神ソーマ、河神シンドゥ(インダス川)、聖河サラスヴァティーなどは地界に属する。これらの神々は自然現象をもたらす神々であるが、それ以外にも最も多くの賛歌が寄せられている英雄神インドラ(帝釈天)、道徳神ヴァルナ、友愛神ミトラなどさまざまな神、また悪魔がいる。神々は総じてデーヴァ(ラテン語のデウスの起源)といい、悪魔の通称としてアスラ(阿修羅)が用いられる。<辻直四郎『インド文明の曙』1967 岩波新書 p.44-90 にはリグ=ヴェーダに表れる神々について詳しい解説がある。>参考 日本にも伝わったリグ=ヴェーダの神々
リグ=ヴェーダに登場する神々には、ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』の神々やギリシア・ローマ神話の神々と共通するものが多い。天神ディヤウスはギリシアのゼウス、天空と友愛の神ミトラはゾロアスター教の太陽神ミトラに相当する。またその神々は仏教に伴い、遠路わが国にも伝来している。軍神であり雷神であるインドラ神は仏教世界を守護する帝釈天、河神(女神)サラスヴァティーは弁財天、地獄(ナラカ、そこから奈落という日本語が生まれた)の支配者ヤマは閻魔大王、などなどとなって今でも民間信仰の対象になっている。<山崎元一『古代インドの文明と社会』中央公論社版世界の歴史3 p.54>