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ドンソン文化

紀元前5世紀、東南アジアの北部ベトナムを中心に、中国の青銅器文化の影響を受けて成立した文化。特徴的な遺物に銅鼓がある。

 ドンソンはベトナムの北部のタインホワ州にある遺跡。ドンソン文化の成立時期は前5世紀頃とされる。最大の特徴は、銅鼓という青銅器で、中国南部の雲南(昆明地方)から北部ベトナムにかけて出土している。なお、北部ベトナムにはまもなく中国から鉄器が伝わり、青銅器と併用されるようになる。また、東南アジアの金属器文化としては他に、中南部ベトナムのサーフィン文化、東部タイのバンチェン文化がある。

銅鼓のもつ意味

 紀元前2000年紀には、ベトナム北部にフングエン文化と呼ばれる新石器文化が生まれており、前1500年頃には金属器を持つようになった。この基板の上に前5世紀頃に雲南から銅鼓を特徴とする文化を受け入れてドンソン文化が成立した。
 ドンソン文化は東南アジアを代表する青銅器文化として成長した。銅鼓は、河川、港湾、内陸道路などの交通の要衝にある有力者の墓から多く出土しており、富と権力の象徴であったと考えられ、それを使用した社会には首長制が成立していたと思われる。またその分布圏の広さからは、すでにこの時期から交易ネットワークで結ばれていたことがわかる。同時期のベトナム中部のサーフィン文化圏とならんで、これらを土台として東南アジアの初期国家が展開していく。<古田元夫『東南アジア史10講』2021 岩波新書 p.7>