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フワーリズミー

9世紀に活躍したイスラーム世界の数学者。代数学を草紙し、現代の数学にも影響を及ぼしている。


ウズベキスタンのヒヴァ城入口にある
フワーリズミー像
 9世紀前半、アッバース朝の都バグダードで活躍したアラビア数学の大家。ホラズム(フワーリズム)出身なのでアル=フワーリズミーという。イラン人。インド起源ゼロの概念を初めて用いたことで知られ、その著書『代数学』は、後にラテン語に翻訳されてヨーロッパに伝えられ、教科書とされた。また天文学者でもあり、アラビアとインドの天文学を融合させて、より正確な天文表を作成た。

アルゴリズムの語源

 なお代数学を意味する英語のアルジェブラもアラビア起源の言葉で、アルは定冠詞、ジェブラは「復元する」という意味からきた。また数学である種の問題を解くための計算の手順、方法を意味するアルゴリズムという用語はこのアル=フワーリズミーに由来する。現在、ウズベキスタンの西部の世界遺産ヒヴァのイチャンカラ(ヒヴァ=ハン国のハンの居城)入口に、フワーリズミーの記念像がある。

グローバルな遺産の一人

 ベンガル出身の現代の経済学者で、ノーベル経済学賞の受賞者、アマルティア・センは、東京での講演で、フワーリズミーに触れ、グローマリゼーションを西洋文明の拡張と解釈する見方を批判している。
(引用)グローバル文明は、世界遺産であり、特定ローカル文化の単なる寄せ集めではありません。たとえば現代欧米の数学者が難しい計算問題を解くにあたって、アルゴリズム(アラビア記数法)を利用しても、九世紀前半に活躍したアラビアの数学者アル=フワーリズミーの名を記念し讃える手助けをしているとは気づかないかもしれません(アルゴリズムはこのアル=フワーリズミーの名前に由来しているのです)。このように西洋の科学や数学を、非西洋ルーツが明白な一連の科学者や数学者と結びつけている知的関連性の鎖が存在しているのです。<アマルティア・セン/加藤幹雄訳『グローバリゼーションと人間の安全保障』2017 ちくま学芸文庫 p.25>
 アマルティア・センによれば、アル=フワーリズミーの正確な名前は、ムハンマド・イブン・ムーサー・アル=フワーリズミーで、アルジェブラ(代数学)の語源も彼の有名な著作である『ジャブル・ムカーバラ』(Al-Jabr ma-al-Muqabilah)に由来するという。フワーリズムーは、その著作を通じて西洋のルネサンス、次いで啓蒙時代、そして最終的には産業革命にさえ大きな影響を及ぼした非西洋社会――アラブ、インド、中国など――出身の多数の貢献者の一人にすぎない。<アマルティア・セン『同上書』p.25>